【ツアープロインタビュー】小鯛竜也

「ミスする確率」は誰にでもある。その「確率」を自分で認識できれば、ミスを引きずらずにプレーできると思う


 2017年10月に開催された「マイナビABCチャンピオンシップ」。台風の接近による荒天のため最終ラウンドが中止になった瞬間、第3ラウンド終了時点で単独トップだった小鯛竜也の優勝が決定。プロ転向10年目にして、念願のツアー初優勝を遂げた。2勝目を狙う彼にとって、今季はどんな1年になるのだろう。※インタビューは2018年8月に行ったものです
 
—— シーズンも中盤を迎えました。今季はどんなシーズンですか?
小鯛竜也(以下、小鯛):すごく大事なシーズン。ああいうカタチで優勝できた翌年なので「今年もしっかり成績を残さないと」と考えています。昨年は優勝できたけれどベスト10に入れたのは、優勝も含めて2回ぐらい。だから今季は優勝争いできる試合を増やしたいです。
—— 1勝したことで、今年は昨年とは違う課題や目標ができましたか?
小鯛:そうですね。昨年は1年間試合に出ることを考えて「しっかりシードを獲る」ということが課題、というか目標でした。今季はシードを獲って出場の確保はできているので、1年を通して戦えるカラダを作り、秋口にピークへ持っていけるようにしたい。今季前半は3回ぐらいトップ10に入れたので、今後ももっと優勝争いをして、2勝目を挙げたいし、ゴルフ日本シリーズJTカップにも出たいです。
—— 優勝争いになると、ちょっとしたミスがいつも以上に気にかかってしまうと思うけれど、そういうときはどのように気持ちを切り替えていますか?
小鯛:あまり引きずらないタイプ……というか、引きずらないようにしています。「ミスする確率」は誰にでもあるんです。その確率をどれぐらい自分で認識しているか、が大事なんじゃないかな。これが分かっていればミスしたときもそんなにショックを受けないと思うんです。
—— 確率的に起こるいろんな結果を考えて?
小鯛:はい。もちろん成功するイメージを持ってトライはするけど、ミスしたとしても「だからダメ」というわけではなく「なぜダメだったか」ということをちゃんと考えます。
—— そうすれば、出たミスに対しての対応策の引き出しが増える?
小鯛:そうですね。次へとつなげていけるような。そのためにも自分を客観的に見るようにしています。自分のゴルフを客観的に見れて、あまり喜ぶこともなく、すごく落ち込むこともなく、ずっとフラットで淡々とプレーできるゴルファーになりたい。たとえばバーディを奪ってもただ喜ぶだけでなく「ここでこうしたからバーディが奪れた」というように考えられればメンタル的にもすごくラクなので、そういうプレーヤーになりたいですね。
—— プレー面で、最近変化はありましたか?
小鯛:ドライバーの飛距離が出てきて、バーディが獲れそうな感じになってきました。だけどボギーも増えてきている。前まではどちらかというと、ボギーは打たないタイプだったので、自分の中でも葛藤しているところはあるんですけど……。でもバーディが増えた方が可能性が広がると思うし「攻めている結果のボギー」だと考えて「攻めるゴルフ」をメインにしています。

 5歳でゴルフを始め、17歳でプロ転向。現在28歳の小鯛のゴルフ人生は長い。「プロ転向後は『試合に出たくても出られない』そんな時期が長く続いた」と言うが、経験を重ね、さまざまなことを考えながらゴルフと向き合ってきた彼は過去を振り返り、そして未来を見て、どんなことを思うのだろう。
—— 長くゴルフをしてきて「これがキッカケでゴルファーとしての人生が変わったかもしれない」と思うようなことはありますか?
小鯛:プロになって11年ですが、最初はなかなか試合に出られず……。でも5年前に結婚して、4年前に最初の子供ができてから成績が出はじめ、試合に出られるようになりました。「結婚」と「子供ができたこと」。これは自分の中ですごく大きかったんじゃないかと思います。
—— ゴルフに対してのモチベーションが変わった?
小鯛:自分の人間性がガラッと変わったぐらい違うかもしれない。
—— 人間性? どんなふうに?
小鯛:単純なことなんですけど「もっと頑張らないと」って。実際に結婚して、子供ができたとき、今まで以上に本気でそう思うようになりました。奥さんがゴルフに集中できる環境を作ってくれるので、そういう部分も大きいですね。すごく助かっています。
—— 「もっと頑張る」ための今後の課題を挙げるなら?
小鯛:「自分を客観的に見て、コントロールしていく」っていうのが一番ですね。ゴルフだけでなく、私生活でもいろんなことを客観的に見るようにすると、トレーニングのやり方も変わると思うし、時間の使い方も変わってくると思う。そういうことを心がけていると、たとえば「もうトレーニングやめちゃおうかな」みたいに弱い自分が出てきた時に「そんな奴は絶対にダメになるぞ」と客観的に見て、諌められるようになる、かな?
—— では、これからずっとゴルフを続けていく中で「最終的にこうなりたい」という目標はありますか?
小鯛:目標までの通過点になるかも知れないけど、まずは日本でしっかりやって、アメリカに挑戦したいです。小平智も優勝したし、石川遼や松山英樹も行っているので、やっぱり自分も行きたい。今年、ソニーオープンの推薦をもらってアメリカに行ったのですが「ここで1年しっかりやりたい」と思いました。そのあとがどうなるか、は自分でも想像はつかないけれど、挑戦していきたいですね。
—— これを読んでいる読者のみなさんに、どんなふうにプレーを見てもらいたいですか?
小鯛:みなさんにプレーを見てもらえるイベントが増えたので、会場で実際にゴルフを見てもらえればうれしいです。自分のプレーを見ていただきたいのはもちろんですが、若手もどんどん増えてきています。「こういう選手がいる」「こういうプレーをしている」というのを目の前で見て、楽しんでもらいたいですね。

 

小鯛竜也

●こだい・たつや/1990年生まれ。17歳でプロに転向し、17年「マイナビABCチャンピオンシップ」でツアー初優勝。フリー。大阪府出身。

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