
「勝負ご飯は中華」にこやかに語る政田夢乃が憧れている選手は?
ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。
どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。
「意外と戦える」と思えました

今季はそれ以上を目指します!」
昨年、海外メジャーで優勝し、いまや日本を代表するプレーヤーとなった古江彩佳や、国内でメジャーを含む複数回優勝を果たした西村優菜や吉田優利。現在、米国でプレーするそうそうたるメンバーを抑えて、中学と高校で2度の全国制覇をした政田夢乃。
プロテスト合格に5年を要した彼女だが、プロ1年目の昨シーズンはJLPGAツアーでトップ10入り5回と健闘し、8月の「NEC軽井沢72」では最終日最終ホールまで首位に立つなど、改めてその実力をみせてくれた。惜しくもシード獲得とはならなかったが、QT(最終予選会)を上位で通過し、今季は開幕からツアーに臨む。昨年の振り返りと今シーズンに賭ける思い、そして自身の将来像について話をしてくれた。
──プロ1年目、自己評価は何点でしたか?
政田:80点くらいをつけてもいいかな、と思えるシーズンでした。全体的にとくに悪いところがなかったです。
──では、よかったところは?
政田:ずっとパットの調子がよかったです。思ったより予選通過もできたし、上位争いもできました。「ちゃんと戦えてるな」って実感した1年でしたね。
──たしかに昨年の政田選手は、パットがよく入るイメージでした。
政田:オフにみんなにいわれました(笑)。じつはそれまで、パットはそんなに得意ではなかったのですが、昨年開幕前に変えたパターが、どのコースのグリーンにも対応してくれたのがよかったのかもしれません。
──では、残り20点の課題は?
政田:やっぱりドライバーの飛距離です。いま230ヤードですが、2打目の距離を少しでも短くできるように、今年のオフでは飛距離を意識したトレーニングを取り入れています。
──ほかに強化したいところはありますか?
政田:最終日まで戦い切るスタミナですね。3日目以降に疲れが出てドライバーが曲がってしまい、2打目でグリーンを狙えないという場面が結構あったので。
──今年は昨年より、出場する試合数も増えそうですしね。
政田:そうですね。昨年の好調を維持しながら、開幕までに飛距離とスタミナをアップできればと思っています。
──昨シーズンを少し振り返ってください。5月、推薦出場のレギュラーツアー「リゾートトラストレディス」で、いきなり大きなポイントを獲得。この試合がひとつのターニングポイントになりましたね。
政田:4月からステップアップツアーに出ていて、オフに変えたUTのミスがだんだん目立つようになってきました。そこで思い切ってUTを元に戻して臨んだ最初の試合が「リゾートトラスト」だったんです。
──いきなり結果が出た?
政田:出ました(笑)。そこでとれたポイントで、以降のレギュラーツアーに出られることになりました。
「軽井沢での1打に悔いはありません」

──8月の軽井沢で優勝争いがありましたね。最終日18番ホールまで首位に立っていましたが……。
政田:はい。最後は完全にミスショットでした。ただ優勝争いをしている実感がそれほどはなかったんです。(優勝した河本)結ちゃんより3組前で回っていたので、守りに入る気持ちにはなれず、攻め続けた結果があの池への1打でした。
──悔いのない1打だったと?
政田:そうですね。優勝できなかったのは残念でしたが、後悔はしてないです。後半戦につながる、いい経験ができた大会でした。
──そのあとの「ニトリ」「ゴルフ5」でも上位でしたが、熱い夏は得意なんですか?
政田:いつも夏から秋にかけて、だんだん自分のゴルフが仕上がってくるんです。地元北海道は冬が長いから、寒いうちは外でゴルフをしなかったので。
──では、ツアーが開幕する3月はまだエンジンがかかっていない?
政田:普段どおりだとそうですね(笑)。でも、今年は開幕戦から出れるので、そうもいっていられません。
──わずかにシードに届かずプロ1年目を終えましたが、QTは上位フィニッシュで今季の前半戦出場を確保しました。あっという間の1年だったのでは?
政田:はい。すごく成長を実感できたシーズンでした。
──気分転換にはどんなことを?
政田:「食べる」と「寝る」です(笑)。とくに昨年は、ツアー先でいろいろ食べました。中華料理を食べたときトップ10に入れたので、それ以来中華が「勝負ご飯」です。
──寝食は大事ですよね(笑)。さて、今季の目標はやっぱり?
政田:初優勝です。少なくとも昨年の自分は超えたいですね。
──将来どんなゴルファーになりたいですか?
政田:「強い選手」になりたいのはもちろんですが、みんなに憧れられる選手になれたらうれしいです。というのは、私がプロを目指したのは小さいころ父とトーナメントを見に行って、北田瑠衣さんのプレーを見たのがきっかけでした。とてもカッコよくてやさしくて、行くたびにボールをいただきました。ルーティンなど瑠衣さんの影響を受けたものがたくさんあります。
──たしかに、そんなプロが身近にいたら、ゴルフをやってみようという気持ちになりますね。
政田:ですよね。いま地元の北海道はゴルフ人口が減ってきています。寒いので子どもたちがゴルフをはじめる機会がほかの地域より少なくて。だから今度は私が、瑠衣さんみたいな存在になれたらって思っているんです。

終始ふんわりとした声で話をしてくれた政田夢乃。だが、その言葉はズシっとした質量をともなっていた。
彼女にとっての北田瑠衣のように、競技をはじめたきっかけが「子どものころに試合会場やテレビで見た憧れの選手の存在」だったという選手はかなり多い。これはゴルフをはじめ、プロスポーツが長年続いていくための不可欠な流れである。
憧れの選手の背中を追ってその世界に入り、やがて自身の背中を追う子どもたちが、同じくこの世界に入ってくる。そのループが競技の存続と発展につながっていくのだ。
「憧れ」の存在になりたいということは、その役目を担うということ。心で思っていたとしても、プロ2年目の選手がそれを言葉にするのは、なかなか覚悟がいる。
「初優勝」を今季の目標としているが、きっと政田夢乃の視線はもっともっと先を見据えている。そこには、2年目のジンクスが取りつくスキは見られない。
いかがでしたか? 政田プロのこれからの活躍に目が離せませんね!

政田夢乃
●まさだ・ゆめの/2000年生まれ、北海道出身。2023年プロテストに合格し、翌2024年5月にツアーデビュー戦「リゾートトラストレディス」で8位タイ。以降「NEC軽井沢72」では優勝争いをするなど、出場20試合で予選通過18試合と安定した活躍をみせた。今季は開幕戦から参戦し、ツアー初優勝を目指す。なないろ生命所属。
文=ひよこきんぎょ
写真=小林 司
撮影トーナメント=NEC軽井沢72
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