「25歳のネクストヒロイン」“初シード”を獲得した広島出身の女子プロとは?

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフを「よりよいもの」にしていくために様々なことを考え、走り続けている。「どんなこと」を考え、「どのように」ゴルフに向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。

今回は、田辺ひかりプロにインタビューしました。

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レギュラーツアーに出られる機会が増えた

ショットがよくなると自分自身のテンションも変わる。
フェアウェイに乗せるところからゴルフが始まると思っている

――20-21年シーズンは19年シーズンに比べて、賞金ランキングが大幅に上がり、シードを獲得しました。振り返っていかがですか?

田辺:自分のなかではそこまで特別なことはありませんでした。QTランキングが46位のときにコロナが始まり、海外の選手が来られなくなってしまったというのがあって、試合に出場する機会が増えました。言い方はよくないですが、コロナのおかげで試合に出られるようになったんです。

レギュラーシーズンを経験できて、もちろん、ツアーに出ること自体がそのときの目標でもあったので、とにかく試合に出られることがうれしかった。そして、20年の日本女子女プロゴルフ選手権は、よく行っているコースだったということもあって、落ち着いてプレーでき、その結果2位に入ることができました。とにかく楽しかった。

とくに19年と比べてスイングや考え方が変わったというわけではないんです。シンプルに試合を楽しめたのがよかったのかもしれません。あとは、当時コーチをしていただいた佐伯三貴さんや、ステキなキャディさんと出会ったのはいいきっかけになっているかも。今でも感謝しています。

――試合を楽しめてなおかつ結果がついてきたんですね。

田辺:そうなんです。でも、日本女子プロゴルフ選手権で「こういう感じで回ったら成績に繋がるのか!」とわかったのですが、そこからは楽しいという気持ちよりも、もっとガンバりたいという気持ちが強くなり、勝つのが難しくなっていきました。そのまま今年がはじまった感じはしますね。

――オフはどのように過ごされていたのですか?

田辺:今までのオフ期間は冬の寒さのせいで、トレーニングやスイング改造をメインにしていてなかなかラウンドができていなかったのですが、今年のオフはとにかくラウンドしていました。

いつもだったら開幕すると「久々のラウンドだ」と思うことが多かったので、開幕のときに「今日もラウンドか!」という気持ちで臨みたかったんです。

――開幕してどうでしたか?

田辺:結局はケガのせいで開幕も不安な状態で迎えたのですが、順位がよくなかった割にいいゴルフができて、思ったよりはいけそうだなと思えました。まだ万全ではないけど、今はできることをして、体とうまく付き合いながらやっていけたらと思っています。

――プレーの持ち味は?

田辺:プロテストに合格してからずっと曲がらないショットと答えています。ですが、昨シーズンはパーオン率がとにかく悪くて、何とかアプローチやパターでしのいでいました。

自分のなかではショットメーカーのプレーヤーにこだわりがあるので、それに近づけるように、スイングを少しずつ変えてパーオン率を上げていきたいです。

――なぜそこまでショットにこだわるのですか?

田辺:ショットがよくなると自分自身のテンションも変わるんです。私はフェアウェイに乗せるところからゴルフが始まると考えているので、まずはフェアウェイにしっかり乗せたい。

それができるとセカンドショットの気持ちにもつながって、その後のショットにもどんどんいい影響を与えてくれると思っています。

理想のスイングで理想のボールを打ちたい

 プロ野球選手の鈴木誠也さんの本を読んでプロとしての考え方やテンションの高め方が変わった

――ゴルフを始めたきっかけは?

田辺:小学2年生のときに父の単身赴任をきっかけに鳥取に行きました。そこでたまたま父がネットでクラブを見ているのを兄と一緒に見ていて、自分たちもほしいと言い始め、しかもそのときちょうど新聞にスクールの広告が出ていたんです。タイミングが重なりました(笑)。

その流れでゴルフスクールに通うことになり、スクールに行ってみたら1球目からポーンと打てちゃったんで、できるかもと思ったんです。

――プロになろうと決意したのは?

田辺:高校2年生の終わりになって周りは大学受験でしたが、私はもうプロテストを受けてプロとしてやっていかないといけないと思って覚悟がつきました。

――辛いときはどのようにして乗り越えましたか?

田辺:プロになってからステップアップツアーに出ることが多くて、19年は推薦をもらってもレギュラーツアーにも出させてもらったんですが、全部予選落ち。

ガンバりたい気持ちはずっとあったのに行動に移せなかったんです。でもコロナで試合がなかった期間にプロ野球選手の鈴木誠也さんの本を読んで、「せっかくプロのスゴい世界にいるのにガンバらないのはもったいない」という言葉が、確かにと思って。

努力しないのはもったいないなってシンプルに思えて、そこからガンバろうと思えました。それから一気にプロとしての考え方やテンションの高め方が変わりました。

――理想のゴルファー像は?

田辺:カッコいいプレーヤーになりたいです。自分の理想のスイングで理想のボールを打ちたいという思いがあるのですが、最近はいい結果を出せばどんなスイングでもいいに変わりつつあるんです。でもいつかは「なんであの感じで強いんだろう」よりは「そりゃあ勝つよな」って思われるプレーをしたいです。

あと、私は感情が前面に出てしまうので、態度が悪いとか顔が怖いとかをよく言われるんです(笑)。悪いときは感情を出さず、いいときは感情を出すようにしていきたいですね。いいときはめちゃくちゃ鬱陶しいくらい喜びたい(笑)。それで悪いときは「全然悪くないですよ?」って感じで流れるようにプレーしたいです。

――最終的なゴルファーとしての目標は?

田辺:ずっと考えているんですけど、今は何をすればいいかのイメージが湧かないです。明確な目標を立てて行動できればいい結果につながると思っているんですが、今の現状をどうにかしないとという思いでいっぱいで。この余裕のなさが今の結果に反映されているのかなとは思います。

でもゴルフをやめた後にやりたい目標はあって、今はその目標のためにガンバろうという感じかもしれません。

――それはどんな目標ですか?

田辺:自分でフルデザインした家を建てたいという目標がずっとあります。ガンバって有名になれば夢に近づけるんじゃないかと思っています! ここが他のプロと違うのかなと(笑)

――ステキな夢ですね。

田辺:ゴルフも優勝したいとかは当たり前の話だと思うので、そうじゃない明確な目標を立てなきゃなって思っていますけどね(笑)。昨シーズンはやっとシードを取れたので、今年もシードはマストで1試合でも多く出たいです。もっと上位で戦っていろんな人に知ってもらいたいなと思います。

優勝してまたインタビューしてもらえるようにガンバります!(笑)

田辺ひかり

●たなべ・ひかり/1997年生まれ、広島県出身。165cm。20年は日本女子プロゴルフ選手権で2位タイ、21年はダイキンオーキッドレディスで3位に入った。20-21年シーズンに賞金ランキングは自己最高の42位になり、初シードを獲得した。伊藤園所属。

写真=田中宏幸

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