若手女子プロ3人のスイング解説!「初優勝の期待大!」

シーズンの折り返しを迎えた国内女子ツアーは、まだまだ新たなヒロインが誕生しそうな気配。次は誰が栄光を手にするのか?自身もツアーに参戦し、現在も挑戦中の中村香織が“要チェック選手”のスイングを解説する。

一瞬で出力を上げる“メリハリ”スイング

小林光希
●こばやし・みつき/2002年生まれ、岡山県出身。161cm。2023年にプロ入りし、昨年シード権を獲得。今季の前半戦はトップ5入り3回を含むトップ10入り4回と安定した成績を残し、メルセデス・ランキングは15位にランクイン。三徳商事所属。

アドレス~バックスイング

Point:手とヘッドの位置関係がアドレスから変わらない

アドレスで特徴的なのはグリップ。左腕が真っすぐで、ややストロンググリップに持つのが女子プロでは主流ですが、小林選手の場合は左がややウィークなうえ、左ヒジが少し曲がるくらいのゆとりがあります。そこから手とクラブヘッドの位置がまったく変わらず、ヘッドの重みを感じながら丁寧にバックスイングが行なわれる。また、右足がいっさいズレない柔軟性で、トップまでパワーを溜めていきます。

トップ~切り返し

トップポジションではクラブヘッドが手元に隠れているので、シャフトが平行、なおかつ過度なクロスやレイドオフのポジションにないことがわかります。切り返しでは下半身を使いすぎることなく、クラブがオンプレーンに下りてくる。右足の蹴りが強すぎて骨盤が開いて、振り遅れてしまう人は、マネしてみるとボールをしっかりとつかまえられます。

ダウンスイング~インパクト

Point:シャフトが右前腕に重なっている(写真左)
Point:インパクトしても右足がめくれていない(写真右)

シャフトが地面と平行になるあたりを見ると、右前腕とシャフトが重なって見えます。これは強いタメが入っていることを意味し、小林選手の飛距離と安定の源泉といえるでしょう。インパクトでも右足は地面から離れておらず、いわゆる「ベタ足」の状態です。これは意図的にベタ足にしているわけではなく、あくまで切り返しで力をクラブにかけたら、その後はクラブの通り道を作っているだけで、余計な力を加えていないというのが正解でしょう。

フォロースルー

フォローでも下半身の運動量は最小限にとどまっています。通常は下半身が止まってしまうと急激にクラブヘッドが返ってフェースが閉じることがありますが、フェースの向きはいたってニュートラルです。体幹部分が最後まで動き続ける柔軟性があることがわかります。切り返しでかけた瞬間的な力をダウンスイングからフォローにかけてバランスよく伝えているということです。

神ワザPoint

特徴はなんといってもこの「ベタ足」。単に下半身を止めているのではなく、一瞬でクラブに力をかけて、余計なことをしていない。また、それをいっさい邪魔しない体の動きと柔軟性もお見事。

クラブに強烈に負荷をかける|“スリム&ストロング”スイング

青木香奈子
●あおき・かなこ/2000年生まれ、宮崎県出身。166cm。2024年プロテスト合格、今季からツアーデビューとなる。4月のステップアップツアー「大王海運レディスオープン」で優勝。人気、実力ともに上昇中の期待の星。マイナビ所属。

アドレス~テークバック

Point:グリップエンドが数センチ余っている(写真左)
Point:フェースはややオープンのまま上がっていく(写真右)

バランスがとれた、とてもいいアドレスです。よく見るとグリップエンドを数センチ余らせて握っています。一般的にはシャフトは、長く持ったほうがヘッドスピードは上がるといわれていますが、少し短く持つことでミート率がアップ。振り切りもよくなるので飛距離を落とさずに方向性を上げることが可能です。テークバックは左ヒザが前に出ることで、骨盤ごと体幹が動き出します。

バックスイング~トップ

ハーフウェイバックのポジションでは、手よりもクラブヘッドが前にあるので、ややアウト方向へヘッドを上げています。フェースアングルは地面に対して垂直、ややオープンフェースです。トップではシャフトが背中方向を指していて、いわゆるレイドオフの形に。左ヒザが深く曲がっているので、右ヒザとの間に隙間が見えます。上半身と下半身の捻転差を作らず、骨盤から全身を深く回しているのが特徴です。

切り返し~インパクト

Point:強い切り返しだがシャフトが垂れない

手元がグッと地面方向へ下りてくることでシャフトが立ち、強烈なテンションをかけていきます。右足で地面を強く蹴り、骨盤がグッとターゲット方向へ回転していくのですが、上半身がしっかりついていくのでクラブがアンダーに垂れることなく下りてくるのは見事です。インパクトでは骨盤がほぼ完全にターゲットを向き、左カカトも浮いている。地面反力のうち、バーティカル(垂直方向)とトルク(回転)の力が最大になっているのがわかります。

フォロースルー

とくにすごいポイントは、フォローのときにこのカメラアングルでクラブヘッドと腕が完全に体に隠れること。腕が真っすぐになり、その延長線上にクラブもあるので、余計なローテーションが抑えられていることを意味しています。

神ワザPoint

レイドオフのトップから手元がグッと下がり、強烈なトルクをシャフトにかけてくる。これは軌道をオンプレーンに維持する目的だけでなく、インパクトに向かっての強い加速につながっていく。筋肉や関節の強さがなせるワザだ。

使えるパワーは全部使う“THE タメ”スイング

吉田 鈴
●よしだ・りん/2004年生まれ、千葉県出身。153cm。姉の吉田優利と姉妹プロとして話題に。2024年のプロテストに合格し、今季よりツアーデビュー。予選通過も増え、順位も上昇中。優勝争いと初優勝の期待がかかる。大東建託所属。

アドレス~バックスイング

足のラインがターゲットラインに対してやや左サイドを指しています。吉田選手はドローボールを得意としていますが、右に打ち出してから左に戻ってくるタイプの場合は、ややオープンスタンスのアドレスになる傾向がある。クラブヘッドと手の位置関係を見ると、シャフトが地面と平行になったタイミングで手よりもうしろにヘッドがあります。フェースアングルは背骨の角度よりも少し垂直に近い状態になっているので、インサイドに上げながらフェースを閉じすぎないようにしています。

トップ~ダウンスイング

Point:上・下半身の捻転が最大になる(写真左)

トップポジションでは胸を90度以上回転しているので、このカメラアングルだと腕が体の正面から外れているように見えますが、そうではありません。あくまで上体の捻転が深いだけで、腕は体の正面にあります。切り返しではトップでできていた捻転差を保ったまま、パワーを溜めながら骨盤がターゲット方向へ回転していく。

体幹部分の強さと柔軟性を感じますね。手元が非常に低く、強いタメができている反面、シャフトはすでにもとのプレーンに戻っていますが、アマチュアがマネるときは少しでもシャフトが寝る(垂れる)と強いフックになってしまうので注意が必要です。

インパクト

Point:胸を開かず切り返し手元がとても低い(写真左)
Point:地面反力を最大に生かしながらも前傾はキープ(写真右)

見事なまでに前傾角度がキープされています。ひとつ前の写真の手元が低くなっている状態からシャフトを寝かさないためには、クラブヘッドを地面に叩きつけるような上体の動きが必要ですが、それが完璧に行なわれています。アマチュアの場合、吉田選手のように両足が浮くくらい地面反力を使おうとすると、ついつい背中まで伸び上がる傾向があるところ、さすがプロの動きですね。

フォロースルー

フォローでやっと下半身と上半身の向きがそろいます。インパクトぎりぎりまで捻転差を保ち、地面反力で一気に上半身を加速させるので、上・下半身の向きがそろうのはボールを打ったあとになる。青木選手と右ヒザの曲がり具合が異なりますが、これは青木選手が右足をうしろに蹴るのに対して、吉田選手は自分から見て、時計回りにツマ先を回すトルクを発揮しているためです。

神ワザPoint

深いトップから、手元が振り遅れずに体の前に低く入ってくる。力のない女子選手の場合はシャフトがインサイドに垂れたり、体が伸び上がってしまうことがあるが、彼女の場合はそれがいっさい見られない。

いかがでしたか? ぜひ、レッスンを参考にして練習をしてみてください。

解説=中村香織
●なかむら・かおり/1986年生まれ、京都府出身。15 年にステップアップツアーで2勝をあげる。現在はトーナメントの予選会に出場するほか、東京都の品川区と目黒区にあるEAST GOLF SCHOOLの代表を務め、レッスン活動にも力を入れている。

写真=渡辺義孝、小林 司
※選手の成績やデータは7月12日現在

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