
ゴルフツアーで「スターリンク」が初導入!その詳細に突撃取材
全米プロゴルフ選手権で、見慣れないものを背負うカメラクルーを多数発見! それが近未来の通信機器と呼ばれる 「スターリンク」だと聞き、その詳細に突撃!
イーロン・マスクも携わる「スターリンク」ツアーに初導入!

電気自動車テスラの創業者で、最近ではトランプ米大統領の側近としての活動でも注目されているイーロン・マスク氏だが、ゴルフ界との関係もゼロではない。マスク氏が携わる「スターリンク」という通信システムをご存じだろうか?それが、5月の全米プロゴルフ選手権にはじめて導入された。
この通信システムには私もとても興味があったので取材することに。その結果や効果、個人的な意見をレポートしよう。まず「スターリンク」とは何か?2002年にイーロン・マスク氏が設立したスペースXが運営する衛星インターネットコンステレーションで、地球上のほぼ全域での衛星インターネットアクセスを可能にする通信システム。
衛星回線を使うことで携帯電波の圏外となる過疎地や砂漠、山中や海上でも通信機器の使用ができるとあり、近年注目を集めている。現在も進行中のウクライナ戦争では、ウクライナ軍がスターリンクを軍事作戦に使用していることが報道されている。ゴルフ界には関係がないもの、と思っていた矢先、全米プロを日本へ中継したU-NEXT(ユーネクスト)のカメラクルーが、白くて四角いプレート状のアンテナを背負っており、これがスターリンクの機材だということがわかった!
いったん、過去のゴルフ中継システムをおさらいしておこう。これまでは、現場のテレビカメラで撮影した映像は、まずはカメラに取りつけられたアンテナから会場内のクレーンの先端などに設置された受信アンテナに向けて送信。その電波を受信した中継車が処理し、次にパラボラアンテナがついた衛星車から通信衛星に発信される。このルートを経由して、世界各国に中継映像が流されていた。
しかし最近では、中継機材もシステムも様変わりしている。カメラクルーは、LIVEU(ライブユー)というポケットWi-Fiのようなものを背負う。この機材は一般的に飛んでいる携帯電話各局の電波を集め、もっとも通信状態のよい電波を常時選択して映像を送信。近年では5Gの電波帯の普及で、通信速度と通信容量が飛躍的に伸び、そのおかげで中継電波も流れやすくなっている。
ただ、それでも携帯電波の弱いゴルフ場や大ギャラリーの影響で容量がひっ迫すると、中継映像が流れにくくなることがあった。それを回避するために、今回の全米プロでU-NEXTはスターリンクも併用することに。突如、白い四角いプレート状の何かを背負うカメラクルーが増えて、会場内でも話題になった。

今回のテレビ中継に従事した、宗円(ソウエン)氏に話を聞いてみると「テストケースとしてスターリンクを使ってみました。じつは、全米プロは米携帯大手のTモバイル社がスポンサーをしていて、試合会場内はTモバイルの5G電波がかなり強く入っていたので、スターリンクが活躍する場面は少なかったんです。スターリンクは携帯電波の圏外になることのあるゴルフ場からの中継には大きな力を発揮するのですが、今回はあまり使わなかった、というのが正直なところ。でも、アメリカ以外の国でも設定を変える必要はなく、役立つ場面はあると思います」
私も試合中、会場内のロープ際から携帯電話を使って写真を急ぎ送信することが多いが、電波の弱い場所も多く、送信に苦労することもしばしば。そんなとき今後は、近未来の通信方法と思っていた新技術のスターリンクが威力を発揮してくれることになりそうだ。
いかがでしたか? 技術の向上で、全世界の熱いゴルフプレーを見られるようになっています!
フォトグラファー 田辺安啓(通称JJ)
●たなべ・やすひろ/1972年生まれ、福井県出身。ニューヨーク在住。ウェストバージニア大学卒業後、ゴルフコース、テレビ局勤務を経験し、ゴルフを専門とするフォトグラファーに転身。ツアーのみならず、コースやゴルフ業界全般に関わる取材も行なっている。
取材・写真=田辺安啓
TEXT & PHOTO Yasuhiro JJ TANABE
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