
FWとUTの簡単に打つ方法をプロが解説!苦手な人の共通点とは?
FWとUTが得意クラブだというアマチュアは少ない。そこで「まったく上達しない原因は何か?」「FW、UTの有効性は?」などをプロにイチから詳しく聞いてみた。教えてもらうプロも厳選!ツアー(試合)でロングショットを多用する経験が豊富で、自身のスタジオでアマチュアを上達へと導いている教え上手のふたりが、目からウロコの開眼のコツをたくさん伝授してくれた!
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昨今のFW・UT事情
「クラブの進化で200ヤードが近くなった」

ゴルフ界のスーパースターになるためには、ロングショットを「キャリーを出して止められる」というのが条件のひとつでした。私は飛距離が出るタイプの選手ではなかったのでそのショットを昔は、2番や3番アイアンで歯を食いしばって打っていましたが、今はクラブとボールの進化で誰でもスーパースターになれるショットが打てる時代になりましたよね。
その恩恵はシニアになってからさらに強く感じています。歳を重ねるとヘッドスピードが落ちて、ボールが高く上がらなくなってしまう。これは筋力よりも柔軟性の低下が原因で、ドライバーはそれほどでもありませんが、ほかの番手は著しく飛ばくなり、気温が10度以下になると20ヤードくらい飛ばないことも。これを補ってなお余りあるクラブが現代のFW・UTで、ゴルフ寿命を延ばすクラブであることは間違いないと思います(日下部)

地面の上から打つ長いクラブで納得のいくショットを打つには、豊富な練習量が必要でした。でも、最近のFW・UTは「練習していなくてもいい球が打てる」のが1番の魅力ですね。スクールでのコーチに3児の子育てなど、練習時間がとれない私にとって、長い距離をやさしく打てる性能の進化はとてもありがたいです。
私も他の選手よりも飛距離が出るタイプではなかったので、早くから7番ウッドや6番UTを使いはじめました。これらのクラブでは〝やさしさ〞だけではない進化も感じています。アマチュアのみなさんのなかには「FWやUTはボールが、高く上がりすぎる、つかまりすぎる」と思っている人もいるでしょうが〝やさしすぎない〞進化も遂げています。悪い印象をもったままでしたら、今回のレッスンをきっかけに最新のFW・UTを試してそのイメージをあらためてほしいです(中村)
なぜ、うまく打てない?苦手な人の共通点

「球が高く上がって飛ぶ、打点のズレにも強い」など、FW・UTの性能の進化は著しい。ところが苦手を克服しているゴルファーは、クラブのやさしさに比例していない。そのワケとは?
「手元が上、ヘッドが下」がダントツの原因ー日下部
100%ミスにつながってしまうのが、ダウンスイングで「手元が上、ヘッドが下」になる打ち方です。手元が浮いてヘッドが垂れてしまうと、クラブの長所や性能をまったく活かすことができません。なぜこの形になってしまうのか、それはクラブ性能が上がってもなお「飛ばしたい! 球を高く上げたい!」と思うから。
近ごろは自分のスイングを簡単に撮影できるようになったので、この形になっていないかセルフチェックをして、悪い形になっていたら即修正が必要ですが、レッスン前にもうひと言アドバイスを。FWとUTは「フェースの真ん中あたりでヒットすれば、勝手に飛んでくれるクラブ」。球筋も美しい弧を描く
きれいな弾道はいりません。OBまでいかない、グリーン近くまでいけばOK。欲張らない気
持ちも大事なクラブです。
「長い、軽い」によるタイミングのズレに注意!ー中村

FWとUTは長くて軽いので、ヘッドスピードが上がるクラブ。その速さを利用すればきちんと飛ばせますが、長い、軽いがデメリットに働いていて「芯に当たらない」ことが大きな悩みだと思います。たしかに、長いクラブで地面の上のボールをミートするのは難しく、ダフリも出ればトップも出る。それをみなさんはこれまでにいろいろな打ち方やレッスンで解消を試みたでしょう。
でも、ミスの原因は軌道やフェース向きよりも〝タイミング〞であることを、声を大にしてお伝えしたいです。タイミングが合わない、ズレると、スイングで描く円弧の最下点がボールの手前や先になってしまう。最下点をボールの真下に近づけ、タイミングをよくする方法としてオススメなのが「シャフトを使って打つ」です!
ビギナーだけでなくFW・UTを苦手とする全ゴルファーに有効なので、ぜひ試してください。
【考え方】ジャストミートのタイミングを作るのは〝シャフト〞!

お恥ずかしい話ですが、ふだんから満足のいく練習ができていません。それでもラウンドや試合の日はやってくる……。急遽、練習するとき私は「シャフトを使って打てていたかな?」に重きを置いてスイングをチェックします。とくにクラブが長いFW・UTは、シャフトをしならせやすいし感じやすい。そのシャフトのしなりとしなり戻りを出す・使うことでインパクトのタイミングと位置が安定する、というのが私の〝考え方〞です!


動かすのは、クラブだけ(×左)、体だけ(×右)でもダメ! 両方のバランスを整える意味でも体とヘッドの間にある〝シャフトを動かす〞が有効だ
【打ち方】体とクラブの〝パワーバランス〞を同じにする!

シャフトをしならせるには、体とクラブの両方のパワーバランスを同じにするのがポイント。どちらか片方が勝ってしまうと、スイングが崩れてしならせることができません。スイング中はふたつの力、ヘッドの遠心力とそれを体側に引き寄せる向心力がかかっています。
そのふたつを拮抗させることが、ふたつのパワーバランスを同じにするコツ。これは、パワーの出力を上げるだけでなく、スイングのテンポやインパクトのタイミングをよくする効果もあるので、素振りでも打つときもヘッドにかかる力とグリップエンド側に引き寄せる力の両方を使って振ってください。
地面を擦る〝連続素振り〞がオススメ

「遠心力と向心力」と言葉で説明するのは簡単ですが、やってみて「?」となる人も多いと思います。これは〝連続素振り〞で体感しましょう。本番のスイングどおりにクラブを左へ振ったら右へ振り戻す、を繰り返す。この素振りがスムーズに行なえると確実に遠心力と向心力が働いているので、それと同じ感覚をもって打ってください。
【打ち方】加速力を落とさない1ーフォローでL字の形を作る!

ミートが大事な一方で、ヘッドスピード(以下・HS)も大切。加速力がクラブを安定させ、ボールを高く遠くに飛ばしてくれます。ところが、長いクラブで地面の上のボールを打つとHSが著しく落ちる人がいます。ちなみに私のドライバーのHSは40m/秒、2インチ短い3番ウッドが38と意外と大きく下がらないこともお伝えしたいです。
みなさんもこれを参考に、弾道計測器などで自分のHSがどのくらい出ているか確認してみるのもいいでしょう。ただし実打で、素振りで計ってはダメですよ(笑)
FWやUTになるとHSが上がらない、大幅に下がっている人は、フォローに加速させる要素を入れてください。インパクト後にクラブをヨコではなく、タテに振り上げて腕とシャフトで「L字」を作る。ヘッドの走りが強くなって加速力アップ。ボールを高く上げることにもひと役買ってくれます。
【打ち方】加速力を落とさない2ーインパクト後に右手を離す!

フォローでの減速は、スイング全体の減速にもつながってしまうのでHSが上がりません。減速してしまう原因としては右手が邪魔をしているケースが多いので、インパクト直後に右手を離して振り切る練習をしてください。
本番のショットはクラブを両手で持って振り切りますが、インパクト後に右手を離し、左手1本でフィニッシュしたときと同じ感覚で振る。リキんで力いっぱい振るスイングよりも、ヘッドスピードが簡単に上がりますよ。

スイング時の右サイドではクラブの操作も大事だが、左サイドは加速に徹することでHSが上がる
「FWはアイアン」「UTはウエッジ」のイメージ!

FW・UTのクラブがやさしくなった。その“やさしく”を具体的にいうと「ミートさえすれば勝手に真っすぐ遠くへ飛んでくれる」です。それでもアマチュアはもっと高く上げたい、もっと飛ばしたいと欲張ってしまうのがうまくならない大きな原因。
そもそもFW・UTは、飛ばせる性能が上がっても飛べば飛ぶだけいいドライバーとは違い、アイアンやウエッジと同じく「狙った飛距離を出すためのクラブ」。それをわかっていながら大振りするからミスをする。大振りすればミートしづらくなるのもわかっているのに、飛ばしたい欲求とは恐ろしいものですね。

“地ベタもの”(地面の上にボールがある)のロングショットは、ホームランはいりません。打つべき弾道はセンター前ヒット、ゴルフ的にいえば大きく曲げずにグリーンの近くまでいく「グリーン手前ヒット」でスコアは必ずよくなります。スイングのイメージもFW・UTだからと変えることなく「FWはアイアン」「UTはウエッジ」のつもりで打つとすぐに好結果が出る。

次から、このイメージで振る利点とスイングの注意点を詳しく説明していきます。
【考え方】「払い打つ」意識は間違い!

FWはティーアップしているドライバーと同じ軌道ではうまく打てません。そこで「払い打つ」と教えるプロや上級者がいますが、これはとてもリスキー。教えているほうはもともと適正な入射角が確保できている人。一方、FWが苦手な人はヘッドが下から入っている人。
前者は「払い打ち」を意識することで入射角がゆるやかになりますが、後者はヘッドがさらに早く落ちてしまいボールのはるか手前を叩くか、ヘッドの上がり際でヒットするので、ダフりとトップが頻発してしまう。そのため、入射角を鋭角にしたい「アイアンのイメージ」のほうがうまく打てるケースが多いのです。

どんなショットでもヘッドは必ず上から入る。その角度を地面と平行に近づけようとするのがミスのもと。地面かボールの頭を叩いてしまう

【打ち方 】「左足は重く使う」「左サイドは低く」が生命線

近代スイングは地面反力を使うなどタテ方向に出力を出して飛ばしますが、FWが苦手な人は絶対にマネしてはいけません。飛ばすための左サイドを伸ばす動きは、「うまく打てない最大の原因」になってしまう。地ベタものは伸び上がったら即アウト!
むしろ、左サイドはできるだけ縮める。私の生徒へのレッスンでは「左足を重くして左サイドを低くする」と教えますが、これがもっとも苦手克服への効果がありますね。

伸び上がる動きは飛距離アップにつながるが、飛ばすクラブではないFWではいっさいいらない動き
【打ち方】「重心の下」にしたいからボール位置は左寄り

重心の真下でインパクトを迎えるのも、伸び上がりや手元が浮くのを防ぐコツ。そのためボール位置はやや左寄りにセットします。真ん中かそれより右側にボールを置くと、鋭角すぎる入射角になりがち。また、打球が上がりにくいボール位置なのですくい打とうともしがちで、体が起き上がりやすくなってしまいます。
もちろん、左に置いたからといって、高く打ち出そうとするスイングはNG。アイアンと同じスイングをしてくだ伸び上がる動きは飛距離アップにつながるが、飛ばすクラブではないFWではいっさいいらない動きさい。

「低い左サイド」と「重く使う左足」の真下でボールをヒットする

ボール位置が右寄りだと重心も右に残る。入射角が鋭角すぎたり、軸が右に倒れて左サイドが高くなってしまう
【打ち方】コンパクト&コントロール8割スイングなりの出力100で振る!

UTはFWよりもクラブが短くなるぶん、タテヨコの精度を上げてグリーンをキャッチしたいからクラブのコントロール力を上げる。そのためにはコンパクトスイングが不可欠で、これはフルスイングをしないウエッジでのアプローチによく似ています。コンパクトスイングで注意したいのは「小さくした振り幅なりの100%の力感で打つ」こと。
8割に下げたのにリキみまくって出力120%で打つのはダメ。力感まで下げてしまうのもNGです。1番いい力感を見つけるための練習法は、最大スイングの飛距離からマイナス10ヤードずつ落としていく、です。コンパクトにした振り幅に対して「このくらいの力感で打つとミートできる、距離感も合う」というのがわかります。
この練習法も飛距離をコントロールするウエッジと同じですよね。やはり、UTは「ウエッジ感覚」がオススメです!

左サイドを縮めてフィニッシュ

上達のための生命線ともいえる「左サイドを低くする」は、オーバーアクションで体にしみ込ませましょう。左サイドをインパクトでもフォローでも低く。おまけにフィニッシュでも左ヒザを曲げたまま左肩を低いポジションに収める、かがんだような形を作ってください。
ドライバーをローティーで打つ

上体が浮く→クラブをキャストする→アッパーブローで打つスイングは、ドライバーを高いティーアップで打つのが得意。しかし、これはFW・UTには不向きなスイング。低くティーアップしたボールを打つ練習で「地ベタからうまく打つ」軌道や入射角を強化しましょう。
パンチショットで地面をタッチ

FWもUTも大なり小なりヘッドは地面に触れます。触れない打ち方はNGなので「地面(マット)をきちんと叩く」をパンチショットで習得。ハンドファーストでヘッドを低く振り抜いていくのがポイントで、コンパクトなスイングと入射角のコントロールもマスターできます。
ショートウッドは自分が出したい飛距離にもっとも簡単にたどりつけるクラブ|日下部

ショートウッドはアマチュアの飛距離ですと、200未満から160ヤードくらいですかね。私もさんざん試しましたが、重心の深さとロフト角の多さが安心感になる。スピン量を上げられるのも利点です。FWが苦手な人もショートウッドなら打てるはず。じつはこれが苦手克服にはとても大事で、苦手意識は失敗体験の積み重なりから生まれるもので、それが重なりすぎるとイップスにもなってしまう。
いったん簡単なクラブを使う、やさしく飛ばせるショートウッドで成功体験を増やすことは3番、5番ウッドも打てるという自身につながっていくのです。自分がたどりつきたい距離に対して1番やさしいクラブを使うのが、スピーディにスコアアップする秘けつ。

アマチュアは大いにしてロングショットに苦戦中でしょうから、ショートウッドはその長い距離を得意に変えつつ、即戦力になるクラブだと思います(日下部)
ハイロフトUTはヘッド形状と専用シャフトの進化も著しいです|中村

ツアーに参戦していたころと比べてヘッドスピードは落ちているのに、最新のFWやUTはきちんと当たると飛びすぎてしまうくらい飛ぶ。そんな進化したFWとUTの短い番手はさらにやさしいですが「以前打ったことがあるけどフケ上がったり、つかまりすぎてしまうんだよね」というアマチュアが少なくありません。
でも、それは最新モデルの“食わず嫌い”です!とくにロングアイアンの代わりに入れようかと悩むハイロフトUTは、昔はどこを向いているのかわかりにくい形状とデザインの悪さを感じましたが、新作はヘッドの座りもフェースの向きもいい!それとシャフト。

純正もカスタムも「UT専用」がたくさん開発されたことでボールのつかまりがほどよくなり、打ち出し角も求める高さにできます。女子ツアーでも以前はロングアイアンを抜いたらショートウッドにする選手が多かったですが、最近はハイロフトUTを使う選手が増えているのもこのふたつの進化が大きいからでしょう(中村)
いかがでしたか? ぜひ、ショートウッドとハイロフトUTを使ってみてください!

日下部光隆
●くさかべ・みつたか/1968年生まれ、神奈川県出身。173cm、76kg。レギュラーツアー通算3勝。WASS ゴルフスタジオ(東京都世田谷区)でのアマチュアレッスンのほか、50歳を過ぎてからはシニアツアーにも参戦中。

中村香織
●なかむら・かおり/1986年生まれ、京都府出身。153cm。2013年にシード権を獲得。ステップアップツアーでは3勝をあげる。現在はEast golf school(東京都品川区)をオープンし、多くのアマチュアのコーチを務めている。
写真=竹田誉之、田中宏幸
協力=日神グループ 平川CC、WASS ゴルフスタジオ