限界突破メソッド|意識、現象、見え方三者のズレを理解しよう

ツアープロの復活優勝や初優勝に貢献し、注目を集める柳橋章徳が中心となり“ゴルフスイングの本質に迫る”チームを結成!体やクラブの使い方の原理原則を追求し、個人の潜在的な能力の限界を突破(ブレイクスルー)するメソッドを毎月紹介しよう。

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レッスン用語の誤解を防ぐために必要な知識

「やっていること」「起こっていること」“どう見えるか”はそれぞれズレがある
柳橋:プレーヤーは動き続けている、重心移動が起こっている
安岡:動きが一瞬止まって見える
トップから切り返す瞬間は、プレーヤーの感覚としては左への踏み込みはほぼ終わっていて、意識はクラブを飛球線と反対方向に引っぱるような動きにある。しかし、体の重心はずっと左に動いている一方、動画などで見ると手元や下半身は一瞬止まっているように見える。これらのズレを理解することが重要だ

――本連載も今回で最終回です。スイングをパートごとにわけて細部を深掘りしてきましたが、最後にスイング全体を通して考えるうえで大事なことをお聞きしてまとめたいと思います。

柳橋(以下柳) ここまで説明してきたことを踏まえて、実際にスイングに取り入れていく際に大事なのは、現象と感覚のズレを理解することだと思います。

――ズレですか。

 はい。プレーヤーが自分で「こう動こう」「こうしよう」と意識していることと、それによって起こる現象は必ずしも一致しないということです。

安岡(以下安) もっといえば、起こっている現象が外からどう見えているかも一致しません。つまり、プレーヤーの意識、それによって起こっている現象、その見え方の3つが全部バラバラだということをわかっていないと、スイングはいい方向に向かいません。

――具体的にはどういうことでしょうか。

 たとえば、トップの瞬間を例に考えると、プレーヤーの感覚としては、この段階では左への踏み込みはほぼ終わっていて、意識はクラブを飛球線と反対方向に引っぱるような切り返しの動きにあります。しかし「スイングカタリスト」(足裏にかかる圧力をデータ化する機器)などでデータをとると、体の重心はずっと左に動いている。でも、動画などで見ると手元や下半身は一瞬止まっているように見える。本来は、これを全部わかっていないとダメなんです。

山縣(以下山) 本連載でも、いいダウンスイングのためにはいい切り返しが必要で、そのためにはいいバックスイングが、いいバックスイングのためにはいい始動が、いい始動のためにはいいアドレスが必要だと繰り返し述べてきました。まずはこの運動連鎖を理解すること。さらに、人間の体は意識したことが動きに反映されるまでにタイムラグがあるので、それを理解することも必要です。

――アマチュアには到底不可能に感じます。

 プロだって難しいと思います。だから僕らのようなコーチがいるんです。

 実際にすべてを理解するのは難しく、ましてそれを踏まえてスイングに反映させるのはもっと難しいことです。でも、まずはこのズレがあることを理解して、その前提でスイングを考えたり、レッスン用語を受けとるようにしてほしいんです。

 ゴルフのレッスン用語は「スエーはダメ」とか「頭を残せ」「左のカベを作れ」といった”静止”を促すワードが多いんです。でも三者のズレを前提に考えると、その多くは「見え方」を指していることがわかると思いますし「フォローでクラブを加速させろ」などという言葉も、インパクト後に加速してもボールに影響は与えられませんから、物理的な事実=現象ではなく、感覚や意識を指しているということがわかります。

――ズレを前提に考えると間違えにくいということですね。

 多分どの表現もウソではないんです。でも意識と現象と見え方がごっちゃになっているので誤解しやすい。

 我々指導者がいうのも何ですが、ゴルフのレッスン用語は難しくて誤解しやすいのは確かです。本連載の内容を知識として覚えておいてもらうことで、そういった誤解を避ける一助になればと願っています。

いかがでしたか? ぜひ、メソッドの解説を意識して、練習をしてみてください。

安岡幸紀
●やすおか・ゆきのり/1988年生まれ、高知県出身。高知高校ゴルフ部で活躍。卒業後、指導者の道に進み、日本プロゴルフ協会のティーチングプロA級を取得。現在はCHEERS GOLFの代表を務め、柳橋らとともにゴルフの原理原則の研究を行なっている。

山縣竜治
●やまがた・りゅうじ/1982年生まれ、山口県出身。國學院大学の野球部で選手とコーチ業を兼任。運動学やチーム指導などを幅広く学び、トレーニング部門も自身の体を実験体に専門的に経験。現在はゴルフの解剖に力を入れ「太子堂やまがた整骨院」で総院長を勤める。

柳橋章徳
●やぎはし・あきのり/1985年生まれ、茨城県出身。最先端のスイング理論を研究し、ツアープロコーチとしても活躍中。その手腕によって復調やレベルアップした選手が増えている。YouTubeチャンネル「BREAK THROUGH GOLF」でも上達に役立つ斬新な情報を発信中。

構成=鈴木康介
写真=小林 司
協力=GOLFOLIC中延店

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