
女子プロは“スタッツ”をどう活用する?「見たくない時も見てしまう」
スタッツという言葉をご存知だろうか?「Statistics(統計学)」の略で、ゴルフ界では、プレーの結果を統計化したものである。
獲得賞金、最優秀選手賞のポイント数、ドライビングディスタンス、パーオン率、平均パット数など部門別の成績を指す。スタッツを見れば、それぞれの選手の特徴やプレースタイルが見えてくる。
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女子プロは“スタッツ”をどう活用する?

「スタッツのことなら1日中喋ることができるよ」というのは、自他ともに“スタッツおたく”と認めるステイシー・ルイス(米国/40歳)だ。米ツアー通算13勝で元世界ランキング1位のルイスは、米ツアーを代表する一人。
23年度のソルハイムカップ(欧米両チーム各12名がチーム戦で競う女子版ライダーカップ)では、米国チームのキャプテンを務めた。ルイスは米国チームを勝利に導くためにスタッツをフル活用した。
例えばソルハイムカップの開催コースは事前に発表されるため、「そのコースの芝や環境と相性の良い選手は誰なのか」、「ひとえにパー4と言っても、どのくらいの距離のパー4の時に、どの選手がバーディを取る率が高いのか」など、米国チーム独自のデータ班が自国の各選手の長所や短所を分析した。
「ライダーカップの米国チームが10年以上前からやってきていることを、遅ればせながら女子でも始めたんです。もちろん統計データが全てじゃないので、(データを元に試したことが)上手くいくこともあれば、そうじゃない時もありました」とルイスが振り返った。

その一方で、いち選手として試合に出場するときは「そこまでスタッツを重要視してない」とルイスが言う。何人かの日本人選手にも聞いてみたところ、似たような返答だった。

西郷真央はシーズン終わりに参考程度に見るぐらい。「たとえば、シーズン序盤は新たなクラブを試すなど試行錯誤することがあるので、スタッツがあまり当てにならないです。また、たとえパーオンしなかったとしてもパターで打てるなど数字が全てじゃないので『あんまりスタッツにとらわれたくないな』って思います」

「スタッツを見たことがない」というのは勝みなみ。「日々、体調が違うし、手の大きさも日によって変わるんで。『あ、ちょっと今日グローブがきついな』とか。それで、ちょっと(クラブの)にぎり具合も変えるので」勝は“今の状態でどうプレーするか”を大事にしている。

吉田優利は「見たくない時も見てしまう」と苦笑いした。「コーチ達が(スタッツを)見るんで、(スタッツを入れる)アプリに毎週、入力してます。やっぱり成績が悪い時は入力するだけでイライラするし、良かった時はすぐ(入力)終わるし」つまり、吉田のコーチ陣がプレーを分析するために吉田は入力係を担っているということだ。
ゴルフは自然を相手にした個人競技のため、一打ごとにその状況判断してプレーすることが大事だということ。ソルハイムカップにとどまらず、野球やサッカーのように対戦チームや対戦相手がいる方が、選手自身もスタッツを判断材料として活用できるのだろう。
写真=南しずか
PHOTO&TEXT Shizuka MINAMI
●みなみ・しずか/東京都出身。 2009 年より米女子ゴルフツアーを取材。ゴルフ雑誌や「ナンバー」「SportsIllustrated」などスポーツ誌に写真を提供。
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