
ベテラン女子プロの磨かれたスイングを解説!「マネしたい神ワザだらけ」
今シーズンの女子ツアーは、ベテラン勢の活躍も目立つ。20代の若手に負けない好成績を上げる30代の実力派選手のスイングをピックアップして、アマチュアが参考にしてほしいポイントを解説!
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アドレス~バックスイング

バックスイングの初期でシャフトがしなっている
通常であれば、左へのミスを警戒してもおかしくないぐらい強めのフックグリップでアドレスをします。しかし、ボール位置がスタンスの中央寄りなので、右方向へ押し出すイメージでフック系のミスをケアしています。バックスイングの初期では、全身がスッと右に移動して体重をシフト。これによってクラブヘッドがやや遅れるため、シャフトに強い負荷がかかる。フェースは、地面を向いたまま上がっていきます。
トップ

首のうしろが正面から見えるほど肩が深く入っている
トップでは、正面のアングルから右ヒジが完全に見えています。一見、腕を大きく動かしていそうに見えますが、これは肩の捻転が深く、両腕が胸の前から背中側へ外れているということ。一般的には振り遅れの原因とされがちですが、アームローテーションを極力抑えた結果でもあります。フェース面が空を指しているので、この段階でフェース向きはクローズ。ここからフェースの向きを変えず、トンカチのように振り下ろしていく準備をしています。
切り返し~インパクト

切り返し以降が穴井選手の真骨頂。これだけ大きなバックスイングをしていながらも腕がしっかり振れていて、インパクトゾーンの直前の段階で両腕が体の前に戻ってくる。アドレスでボールをスタンス中央寄りにセットしているので、十分な打ち出し角度と理想的なクラブパスを得るために体の側屈が大きく入ります。その際、腰が左に突き出てしまったり、腰の右側が低くなるとダフりやフックの原因になるため、アマチュアが強い側屈を取り入れるときにはやや注意が必要です。
フォロースルー

腕のローテーションが少なく左右の手が入れ替わらない
フォローでの足元をよく見ると、少しジャンプしているのがわかります。地面反力を得てしっかりクラブのリリースに活用しているので、最後までヘッドスピードを加速させることができています。左手が右手に隠れて見えないので、腕のローテーションはかなり少ない。元々が強いフックグリップなので、ローテーションは不要ということです。ただ、腕のローテーションをしないとそのぶん運動量が減るので、肩をたくさん回す必要があります。
神ワザPoint

一般的にはここまで捻転が深いと先に体が開いてしまい、振り遅れが生じやすい。しかし、持ち前の体の強さと腕を振り出すセンスで、しっかり腕を胸の前に戻してくる。

穴井 詩
●あない・らら/1987年生まれ、愛知県出身。165cm。女子プロ界屈指の飛ばし屋。若手の台頭に負けず、今シーズンのドライビングディスタンスは3位と衰えを見せない。今年の「ヤマハレディースオープン葛城」を含むツアー通算6勝。ゴルフ5所属。
アドレス~バックスイング

腕の三角形がいっさいブレない
アドレス、グリップはニュートラルですが、やや手元よりもヘッドがターゲット方向へ出ているので、少しアウトサイド・イン軌道のフェードをイメージしているのがわかります。バックスイングでは腕の三角形を崩さず、つねに胸の前に両腕があるように同調しながらクラブを上げていく。余計な力をかけない丁寧な動き出しです。
トップ~切り返し

理想とされる美しいトップポジション
トップポジションではシャフトが地面と平行、肩が深く入っている理想的な形です。最近の若い世代は切り返しの力をかけるタイミングを早めることでシャフトに強い負荷をかけますが、工藤選手の場合はそれがおだやか。元来のパワーがあるのでクラブに余計なトルクをかけず、素直に振り下ろしてくることによってスイング軌道が安定します。
ダウンスイング~インパクト

少しハンドファーストでインパクト時のロフトを減らしている
ダウンスイングでは、骨盤が左へシフトしながら回転していきます。左への移動にともなってクラブや腕には右方向へ強い慣性がかかり、腕や手元の通り道が体に近くなっている。体の近くに腕がくると、縮んだ腕が急激に伸びる途中でインパクトを迎えるので、入射角がダウンブローになることがある。それを回避するため、体の軸を右に傾けてアッパーな入射を担保しています。
フォロースルー~フィニッシュ

インパクト以降、腕とクラブ以外が動いていません。「最後まで体を回せ」というアドバイスを聞くかもしれませんが、じつは工藤選手のようにインパクト直後では体幹はそれほど動かないのが正解。大きな筋肉の運動量が少なくなるからこそ、クラブにエネルギーが伝わって速く動くのです。フィニッシュでは左股関節よりも右股関節のほうがターゲット方向に進んでいて、股関節のやわらかさがうかがえます。
神ワザPoint

高めにティーアップをしたうえで、ハンドファーストなインパクトをしている。適度な体の側屈を入れることで、ややアッパーな入射角を担保。この3つの要素の組み合わせで「高弾道・低スピン」な強い球を打っている。

工藤遥加
●くどう・はるか/1992年生まれ、埼玉県出身。171cm。2011年プロ入り。今年3月の「アクサレディスゴルフトーナメント」で悲願の初優勝を飾った。今季のドライビングディスタンスでは9位に入る飛ばし屋。加賀電子所属。
アドレス~バックスイング

上体が先に体重移動してクラブがあとから動く
アドレスは全体的にリキみがなく、いつでも動き出せるような雰囲気です。グリップはスクエア、ボールの位置はやや中央寄りなので、インサイド・アウト軌道のドローをイメージしているように見えます。クラブヘッドのお尻側が少し浮いており、フェース向きはシャット気味。バックスイングでは上半身が先に右足の上まで移動し、それにつられてクラブが引きずられるように動き出します。
トップ~切り返し

以前よりトップを浅くし切り返しで負荷をかけている
トップポジションは数年前の藤田選手よりもコンパクトになっていますが、じつはここからの出力は昔よりも上がっています。理由は、切り返しのタイミングが早くなったから。クラブが上がりきる前にダウンスイング方向へ力をかけはじめているので、トップがコンパクトになっても体やシャフトには強い負荷をかけることができます。大きく動くほど飛ばしに有利とはかぎらない、ということです。
ダウンスイング~インパクト

ダウンスイング以降では自分でクラブをコントロールしないようにしているのでしょう。切り返しで骨盤を左へ向けて踏み込む準備をしたら、あとは下りてきたクラブの通り道を邪魔しないよう、タイミングよく地面を踏むだけ。とにかくロスが少ない効率的なスイングです。昨今、男子顔負けの飛距離を出す女子プロも多いですが、藤田選手のスイングは体への負荷も少なく、アマチュアゴルファーにとっても参考になります。
フォロースルー

クラブの動きをまったく邪魔しないフォロースルー
シャフトが地面と平行になったときには左右の手の位置が入れ替わっていて、ローテーションが適度に行なわれているのがわかります。アドレスでグリップがスクエアでしたので、この動作はフェースをスクエアに保つために必要です。体幹を必要以上に反らず、フィニッシュに向かっておだやかに体が起きていくのも体にやさしい。フィジカルやパワーに頼りすぎないことが、長く活躍できる秘けつとなっています。
神ワザPoint

切り返しの力をかけるタイミングを早めることで、トップはコンパクトに収めている。ポイントはその後すぐに力を抜いていること。動き出したクラブの挙動を邪魔しないことで、効率的にスイングスピードをかせいでいる。

藤田さいき
●ふじた・さいき/1985年生まれ、静岡県出身。168cm。2005年のプロ入りから今季まで、ツアーに出続けている大ベテラン。通算6勝をあげ、5月の「ワールドレディス サロンパスカップ」でも申ジエとプレーオフの熱戦を演じた。JBS所属。
いかがでしたか? ぜひ、レッスンを参考にしてみてください。

解説=大川夏樹
●おおかわ・なつき/1988年生まれ、神奈川県出身。マンツーマンを中心に、多くのアマチュアゴルファーをレッスンする人気コーチ。SNSでの発信に力を入れており、若い世代からも支持がある。
Instagramアカウント:natsuki72_golf
写真=小林 司、ゲーリー小林
※選手の成績やデータは6月14日現在
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