原江里菜プロに単独インタビュー!「まだまだ試行錯誤中です」

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。

「LADY GO」(レディ・ゴー)をご存知だろうか。結婚、出産などを理由にツアーから遠ざかっている女子プロゴルファーたちへ、再び活躍の場所を提供したいという思いから、有村智恵と原江里菜によって立ち上げられたプロジェクトだ。

この「LADY GO」の主催する大会への参加資格は「30 歳以上の女子プロゴルファー」であること。2022年に第1回大会が開催されたのを皮切りに昨年は4試合が行なわれ、試合数増加とともにその存在の認知度も上がってきている。

今年3月に行なわれた「KURE LADY GO CUP」のあと、このプロジェクトの発起人のひとりである原江里菜に「LADY GO」誕生の経緯や、東北高校時代からの盟友である有村智恵との関係について話を聞いた。

「盛り上がってきましたがまだまだ試行錯誤中です」

原江里菜
●はら・えりな/1987年生まれ、愛知県出身。2008年「NEC軽井沢」で初優勝、2015年「大東建託・いい部屋ネットレディス」で2勝目をあげる。現在はツアー出場と並行して、有村智恵との共同プロジェクト「LADY GO」の運営に尽力。NEC所属。

──「LADY GO」はどのようにはじまったのですか?

原 ちょうど(有村)智恵ちゃんが妊活に入ったタイミングで、彼女のなかに「出産後にまたゴルフで戻ってこられる場所があったらいいね」みたいな発想があったんです。それに対して何か力になれたらと思ったのがスタートでした。

──まずは、有村プロのアイデアがきっかけだったんですね。

原 そうですね。ただその話を聞いて私は「予選会でランキング下位の選手たち」がプレーする場所がもっとあってもいいのかな、と思ったんです。立ち上げのきっかけとなった智恵ちゃんの考えとは少し違いますが、ツアーから離れている選手に、新しい出場機会を作っていきたいという思いは同じだったので、一緒にやってみようかなって。

──おふたりのアイデアで?

原 はい。試行錯誤しながらですが。お風呂で長い時間、話し合いになったことも(笑)

──その苦労のかいあって「LADY GO」の認知度も上がってきましたね。

原 ありがたいことに、最近は選手のほうから「出たいです」とオファーがくるようになりました。「来年30歳になるので、いまから出場を予約してもいいですか?」みたいな。

──それはうれしいですね。JLPGAツアーで活躍中の選手も「LADY GO」に参戦していますね。将来的にトーナメントのような形を目指していますか?

原 たとえば3日間競技なんかは、子どもがいる選手はやはり難しいところがありますよね。私からすると、複数日開催で「真剣勝負」に近い大会をやってみたいと思いますが、智恵ちゃんからすると子どもを連れて何日もホテル暮らしはちょっと厳しいらしくて。

──「LADY GO CUP」は、保育士さんを派遣しての大会も行なっていますよね。

原 はい。選手から好評です。ほかにも「LADY GO」がもっと洗練されたものになるように、智恵ちゃんとつねに話し合いはしているんですが、まだまだ着地点を模索中っていう感じですね。

──着地点が絞れないのを長所ととらえて、大会ごとに特色があってもおもしろいかもしれませんね。

原 それいいですね。今回は「江里菜プロデュース」で、次回は「智恵プロデュース」みたいな。その案、使わせてもらいます(笑)

「試合には出たいけど私、出ていいのかな」

──さて、では江里菜プロ自身の開幕戦の話をうかがってもいいですか。

原 ここ数年のなかでは、1番調子のいい状態で会場の沖縄に入れました。1月と2月でたくさん練習したし、ラウンドもかなりしました。おかげで体も温まっていたので、今回はいけるぞ、と思っていたのですが……。

──2日目の終盤、予選通過ラインで粘っていましたが、惜しかったですね。

原 18番バーディで決勝へ、というイメージでしたが、思いどおりにはいきませんでしたね。

──次の試合にリベンジという気持ち?

原 その部分に少し葛藤があるんですよ。開幕戦もダイキンの方から推薦をいただいての出場でしたが、チャンスをいただけるうちはガンバろうという気持ちと、プロとして結果が出せないなかで推薦をいただくのはどうなのかな?という気持ちで、板挟みになっている自分がいます。

──推薦は今までのプレーに対する評価ですから、堂々と出たらよい気もしますが。

原 もちろん、チャンスがあれば試合に出たいという気持ちのほうが強いんですよ。まだまだ「うまくなりたい」という気持ちもありますから。

──向上心に終わりはない?

原 ですね。ただ最近「うまくなりたい気持ち」と「結果を残すこと」ってなかなか比例しないんだなって思います。

──ジレンマみたいな?

原 うまくなるための方法はわかっているので、今までの経験からその準備は洗練されているんですが、実際には思った以上の結果が表れない。つまり「知って学んではいるけど、それが活かされなくなっている」。自分を分析しすぎなのかもしれませんけど。

──なるほど、細部まで考えを巡らせているのがよくわかりました。最後に、江里菜プロにとって「ゴ
ルフ」とは?

原 「出会い」をくれるものですね。これまで毎日ゴルフのことばかり考えて、それをやり続けていたおかげで、いろいろな人との出会いがありました。ゴルファーでなかったら出会えなかった大切な人たちです。そんなゴルフに出会えたことに感謝したいです。

「世話を焼く」という言葉がある。その「焼く」には「あれこれ気を使って尽力する」という意味があるそうだ。原江里菜はいわゆる「世話焼きの人」だ。たとえば冒頭の「LADY GO」では有村智恵のしたいことを実現すべく、その力になろうと立ち上がったり、スランプに陥っていた堀琴音の2021年の初優勝の影には、彼女の尽力があったことは有名な話だ。

そんな人柄が、自然と多くの人を引き寄せるのだろう。「ゴルファーじゃなかったら何者でもなかった」と自身を評価したが、今ここに「ゴルファーではない原江里菜」を想像できてしまう私がいる。どの道を歩んでいたとしても、彼女は何かを成し遂げていたに違いない、と強く思わせるインタビューだった。

文=ひよこきんぎょ 
写真=田中宏幸 
協力=KURE×LADYGO CUP

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