HONMAの変革が生んだ新世代の名器 「TW777」

HONMAの新作「TW777」は
前作からデザイン、性能が
大幅に変わったと話題沸騰中!
鹿又が新社長との対談でその詳細に迫る。

小川 本日はよろしくお願いします。今回はどうしても鹿又さんに聞きたいことがありました。

鹿又 何でしょうか?

小川 昨年のTW767で、鹿又さんから「今の本間ゴルフには軸がない」「魅力が伝わってこない」とはっきりいわれてしまった。それが社内で広がって私の耳にも入ってきています。その真意を教えてください。

鹿又 気を悪くしたのならすみません。海外メーカーと比較したときに、TW767は魅力が伝わってこない。私はパーシモン時代の本間ゴルフを知っている世代だけに、もったいないと思っていました。

小川 率直な意見をいってもらえるのはすごくありがたい。私も実家の近くに本間ゴルフの直営店があり、父親がHONMAのクラブを買っていました。当時は憧れのクラブであり、カッコいいイメージがありました。でも約2年前、社長に就任するときは「古臭い会社」というイメージでした。だからこそ大々的に変革して、復活させたいという思いは強かったのです。

鹿又 今年のTW777を見たときは驚きました。「これは変わったな」と。まずはモグラを強調させたデザイン。これは見たことありませんでした。

小川 ありがとうございます。今回はクルマのデザインなどを手がけている新しいデザイナーにヘッドのデザインを依頼しました。私も外部から来た人間ですけど、意外と本間ゴルフの社内の人はモグラを軽視していると感じました。

鹿又 当たり前すぎる存在でしたからね。

小川 本間ゴルフにとって伝統でありシンボル。今回はモグラを目立たせることがマストでした。

鹿又 クラブの性能にも驚きました。振りやすさ、飛距離性能、弾道、寛容性のバランスがよい。だから1球目からナイスショットが打てました。

小川 私たちも先ほどコースで鹿又さんが打つ様子を見せてもらいましたが、ウォーミングアップも素振りもしないで、いきなり素晴らしいショットを打たれていたのでホッとしました。

鹿又 シャフトとヘッドのマッチング、バランスがすごくいい。しかも、TW777はボールスピードが出ていて飛距離性能が高い。シンプルに飛びますね!

小川 そこは、酒田工場の技術レベルの証だと思います。私も社長に就任するときに、周囲の人間から止められましたし、最初は不安もありました。でも、就任2日目に酒田工場に行き、匠のみなさんの作業を見たり、話を聞くと「これは大丈夫だ。復活できる」という思いになりました。私が目指した変革は、パーシモン時代の〝カッコいいHONMA”の伝統を現代のクラブに蘇られることでした。

鹿又 ツアープロからの反応はどうでしたか?

小川 それが1番変わりましたね。女子ツアーでは火曜日にテストした選手が、大会の初日から使いはじめた。今までなかった反応でした。

鹿又 ツアープロは結果がよくないと、絶対にシーズン中にクラブを替えたりしません。性能の進化を認めた証だと思います。これだけデザインを変えたなかで、よく性能をアップデートできましたね。

小川 TW777は、開発の順番を変えました。今までは酒田工場の匠が設計をして、性能を出したうえでデザインを決めていました。でも、今回はデザインありきでスタート。最初にデザインを決めてから、そのなかに性能を加えていきました。

鹿又 反対意見はありませんでしたか?

小川 正直にいうと、議論というか激論はありました(笑)。でもモノを作るときに議論は必要。私は匠の皆さんの仕事や技を信頼しています。だから、無茶振りしても答えてくれると信じていました。結果的にデザイナー側と酒田工場が切磋琢磨したことが、プロゴルファーや有識者からも評価されるTW777になったと思います。

鹿又 プロから評価されたのは、アドレスしたときの構えやすさも大きかったと思います。

小川 たしかに女子プロも「顔がいい」という選手が多かったです。デザインありきで開発をスタートしましたが、本間ゴルフの伝統でもある匠がモックアップを作る工程は継承しています。匠が削ったモックアップを3Dスキャンしてデータ化する。それが本間ゴルフの伝統です。

鹿又 それとフェアウェイウッドとユーティリティのソールにも、本間ゴルフの伝統を感じました。

小川 パーシモン時代のGETソールを復活させました。これもデザインからはじまった。酒田工場の匠からは打感、打球音の問題があるという意見もありましたが、最終的には音の問題もクリアしてすごく抜けのいいクラブに仕上げてくれました。

鹿又 よく1年でこれだけ変革しましたね。

小川 まだまだです。TW777は変革の第一歩。これからのHONMAはもっと変わっていきます。

鈴木 私は開発者なので、鹿又さんから「本間ゴルフの開発には軸がない」といわれたのをよく覚えています。

鹿又 直球ですみません(笑)

鈴木 あらためて考えると往年の本間ゴルフは、パーシモンでも新しいことに挑戦したり、カーボンシャフトに関しては国内ではじめて製品化した先駆者。新しい挑戦をするメーカーでした。

鹿又 今回のTW777にも、チタンカーボンという新しい素材を採用していますね。

鈴木 そのヒントは、カーボンシャフトがブラックシャフトといわれていた時代のシャフトでした。当時の本間ゴルフはチタンとカーボンを融合させたチタンカーボンシャフトを開発して、日本をはじめ、米国などで特許も取得していました。

鹿又 そのアイデアをヘッドに?

鈴木 はい。カーボンボディは軽量化できるメリットはあるものの、チタンに比べると剛性は低い。だからカーボン素材にチタン素材をメッシュ状に入れることで軽量かつ剛性が高いヘッドにしました。さらに一体成型のカーボンリングを採用して、上下方向の余計なたわみを抑えて横方向に効率よくたわむようにしています。

鹿又 たしかに振りやすいのに、インパクトは力強かった。

鈴木 前作と比較するとカーボンの体積比は約35%も拡大しました。それだけ軽量化できたことで設計の自由度が上がり、TW777では前方に3.5グラム、後方に20.5グラムのウエイトをつけています。ウエイトを逆にするとまったく別のドライバーになる。それくらい調整の幅が広がったことも大きな進化です。

鹿又 私が試打したときに感じた、振りやすさの要因はどこにあったのでしょうか?

鈴木 やはり酒田工場でシャフトを自社生産しているというのが大きいと思います。ヘッドとシャフトを別々に考えるのではなく、最初から同じコンセプトで開発が進むのでクラブ全体の完成度が高くなります。

鹿又 自社でシャフトを開発できるのは本間ゴルフの伝統であり、大きな強みですね。


小川典利大(左)
㈱本間ゴルフ代表取締役社長 兼 最高経営責任者
●おがわ・のりお/1969年生まれ。ニューヨークの会計事務所を経て、大手スポーツメーカーの副社長、社長として活躍。2023年12月から本間ゴルフの代表取締役社長 兼 最高経営責任者に就任。

鹿又芳典(右)
クラブコーディネーター
●かのまた・よしのり/多くのゴルフメディアで活躍する人気クラブコーディネーター。現役ツアープロのクラブ調整やサポートだけでなく、ジュニアゴルファーの育成にも注力している。


構成=野中真一 写真=相田克己 協力=本間ゴルフ、日神グループ平川CC

関連記事一覧