
エイジシュートの捉え方とは?「人としての”死に方”を探す旅だと気づいた」と解説
グループ経営のゴルフ場においては、人事異動による転勤がつきものです。私も昨年10月、6番目の勤務地となる取手桜が丘ゴルフクラブに支配人として着任しました。
人事異動での新たな出会いに期待!

これまでの土浦カントリー倶楽部には約4年間在籍していたため、一緒に仕事をしたスタッフと離れるのは正直寂しい……。ですが気持ちを切り換えて再スタートです。
転勤が決まるとまずは、お世話になった方やお得意様へ異動の報告をします。以前はハガキ案内が主流でしたが、今はメールやラインをフル活用。
たった4年ですが時代は大きく変わったと実感しました。そして、お取引先様用とお客様用(営業用)の2種類の名刺を作成しての初出勤。ちなみにお客様用の名刺には、似顔絵を入れているので顔も名前も覚えてもらいやすくなるうえに、会話のきっかけにもなって一石三鳥です(笑)。
異動初日は部門長とのミーティングを開催。コロナ禍における今後の課題と目標を説明し、意思共有を図りました。長く支配人業を務めていますが、ゴルフ場運営には部署間の強い絆が必要不可欠。垣根をなくすことで、お客様にとって居心地のいいゴルフ場になればと思います。
91年に開場した当クラブの魅力は、練習場施設の充実と都内から1時間程度というアクセスのよさです。この点をもっとアピールしようと、親しいレッスンプロ宛の優待プラン案内を作成。着任数日後には、初めて来場される方からの道路状況へのお問合せに対応するべく、最寄りインターから何パターン試走し、ルートチェックを行いました。
ナビは便利ですが、つねに最適ルートが出るとはかぎりません。またクラブバスの発着場所も現地確認し、自分の足でつかんだ情報をお客様にお伝えできるようにしています。
まだまだ慣れないことも多いですが、これから新拠点での新しい出会いを期待しています!お気軽にお声かけください。

毎年、年末になると「喪中ハガキ」が届く。昨年末も6枚届いた。5枚は友人の親兄弟の死を知らせものだが、1枚は中学時代の同級生が亡くなった知らせだった。
60歳を過ぎてから同級生の訃報をよく耳にするようになったが、ということは、自分もいつ死んでもおかしくない年齢になったのである。振り返ると、私はそのこと、つまり「死」を意識するようになった62歳頃から、エイジシュートを目標にしてきた。直接のきっかけはエイジシュートを達成したシニアゴルファーを取材するようになり、また62歳のときに熊本県の球磨CCと、同CCの地元の錦町、人吉商工会議所、人吉温泉旅館組合などの協力を得て「エイジシュート全国大会」を開催。
多くのエイジシューターと出会ったからだが、エイジシュートを目標にするようになって、あることに気づいた。
エイジシュートは、ゴルフの達人であれば誰でも達成できるわけではない。第一に歳をとらないとできない。第二に歳をとっても健康でないとできない。
またゴルフをやるにはある程度お金が必要なので、仕事でも成功していないと難しい。逆に腐るほど金があってもできるとは限らない。さらに「あんた、もう歳なんだからゴルフはいい加減にしたら」という妻がいるとコースに出づらいので、家族にも恵まれないといけない。
そう考えると、ゴルフがうまくて健康で、仕事ができて家族にも恵まれた、まさにバランスのよい「人生の達人」のみが到達できる高みがエイジシュートなのである。
そのとき自分の人生を振り返ると、仕事は人の何倍もやって23区内に戸建てをもち、子供たちは全員、行きたい大学院や海外留学に行かせてきたが、60歳を前に離婚して家を手放し、家族とも離れて、人生の達人とはとても言えない後半生を送っていた。
しかし、そこでまた思い直した。「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」という格言を目にしたのだ。
以来、自分でもエイジシュートを目標にして、人生の達人になろうと決心した。結果、68歳のときに68で回って達成した。するとその過程で、また新たな発見があった。
それまでエイジシュートは老後の生き方の指針であると思っていたのが、じつは人としての「死に方」を探す旅であり、自分の人生の理想的な幕の閉じ方、言い換えると「ピンピンコロリ」に近づくための生き方でもあると考えるようになったのだ。
人は生まれてきたときと同じように死に方を選ぶことはできない。いつ、どこで、どうやって死ぬか、誰にもわからない。だから毎日を精一杯、後顧の憂いのないように楽しんで生きなければいけない。
決して私は長生きしたいわけではない。QOL(quality of life)をキープしたいのだ。そのためにゴルフは最高だ。みなさん65歳を過ぎたらエイジシュートを目指しましょう。

いかがでしたか? ゴルフは自分にとってどういうものなのか考えてみてはいかがでしょうか。

田中クリス
●たなか・クリス/1965年生まれ。ゴルフ場の支配人を務めて20年になる。現在は取手桜が丘ゴルフクラブの支配人を務める。
イラスト=丸口洋平
高橋健二
●たかはし・けんじ/1948年生まれ。ゴルフライターとしてレッスンやクラブ情報などを執筆。HC8。