女子プロ界の“飛ばし屋3人”のスイングを解説!飛距離を伸ばすメカニズムとは?

2025年シーズンのルーキー6選手をスイングタイプ別に分け、2号連続で解説。

今月は男子顔負けの「タメて飛ばす」タイプの3選手をピックアップ!

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激タメからリリースされる高圧スイング

神ワザポイント

この2コマを見ると、体の大部分は静かに動いているのに対して腕のアクションがとても大きい。体の運動量を抑えることによって、腕やクラブに大きなエネルギーを伝えている。

アドレス~バックスイング

Point 骨盤がターゲット方向へ少し動いている

とてもオーソドックスなアドレスです。あまりヒザが曲がっていませんが、腕の長さと身長のバランスによっては、さほど曲げなくていい場合があります。バックスイングでは骨盤がその場から動かず、むしろ少しターゲット方向へ移動。これによって体とクラブが引き合う関係が作られており、手の力に頼らない大きなバックスイングを可能にしています。

トップ~切り返し

Point 体の近くを手元が通るのでヒジにゆとりがある

トップから切り返しにかけて頭とヒザの位置が少し低くなり、いわゆる“沈み込み”の動作が入ります。右股関節に圧力が強くかかっていて、これはこのあと右足で強く地面を蹴る準備です。また、この沈み込む動作によって体が伸び上がるのを抑制し、体幹の力でクラブを引っ張りながら、インパクトに向けてヘッドを加速させることができます。

ダウンスイング~インパクト

左腕が地面と平行まできたとき(4コマ目)、クラブのシャフトが地面に対してほぼ垂直。一般的にはこれが理想的なポジションです。特徴的なところはこのあとの1コマ。クラブがシャロー方向へ倒れ、それによって右ヒジが畳まれています。うしろへ倒して「タメ」を作り、ヘッドを加速させる技術は野球などでも使われるテクニックです。左腕がインパクト直前で少し曲がっていますが、決して腕に力が入っているわけではなく、体の近くを手元が通ったことによって腕の長さが余った結果でしょう。むしろ、このあとに腕を伸ばし切ることでヘッドスピードアップにつなげています。

フォロースルー

Point 左右の手が上下入れ替わりローテーション完了

フォローでとくに目立つのは、体の側屈と前腕部のローテーションです。右ヒジを曲げたままインパクトするので、クラブヘッドはアドレス時よりも体に近く、かつ右サイドに残る。そのため、体を曲げてボールにクラブを“届かせる”必要があり、頭が大きく落ちたようなフォローとなるのは「その結果として」です。そして、右手と左手が上下入れ替わっているのは、前腕部がローテーションされていることの証。これはローテーション「する」というよりも、解放されたエネルギーで受動的にローテーション「される」というほうが正解でしょう。

山口すず夏
●やまぐち・すずか/2000年生まれ、神奈川県出身。160cm。18歳のときに「オーストラリア女子アマチュア選手権」で日本人初優勝。同年に米国女子ツアーのQスクールで36位に入り、同ツアーに参戦。24年は3度目の受験でJLPGAのプロテストに合格し、今季はプロとしての国内ツアーデビューを果たした。サマンサグローバル所属。

巧な踏み替えでナチュラルに飛ばすエコスイング

神ワザPoint

スイングにおいて際立つのは、ダウンスイングでの足の踏み替え。左右の足の力がバランスよく出ていないと、右サイドに体重が残ったり、骨盤がターゲット方向にスライドすることがあるが、彼女のスイングにはまったくそれがない。

アドレス~バックスイング

ややワイドスタンスで安定感のあるアドレスは、アライメントもキレイ。グリップをよく見ると、左手の親指と人差し指の間にスペースが空いています。このグリップは一般的には、切り返しで親指の付け根に負担がかかって傷めやすいのでアマチュアは注意が必要です。バックスイングで、骨盤をわずかに右に動かしながら体重移動を行なうタイプで、右ヒジが少し曲がっている。逆に手首の角度はアドレスのままなのも特徴的です。

トップ~切り返し

Point 少し背中が反っている

骨盤が右へスライドしているため、背中はやや反ったような見え方をします。バックスイングでもそうだったように、トップでもコックの角度は浅く、ヒジが畳まれているのがわかります。スコッティ・シェフラーを彷彿させるようなトップの形ですが、切り返しはおだやか。急激に左足に体重を乗せることはしておらず、クラブが〝暴れる〞ような挙動も一切ありません。切り返しても背中の左側につけたワッペンがまだ見えているので、捻転の大きさがうかがえます。

ダウンスイング

Point 骨盤が左を向き踏ん張れる体制に

インパクト前のポジションにおける、骨盤の向きの入れ替えは見事です。足の踏み替えを上手に使えていますね。多くのアマチュアは右足から出た力で骨盤をターゲット方向へ動かしすぎてしまいますが、古家プロは左足が地面に対して斜めになって踏ん張れている。腕を見ると右ヒジが曲がっていますが、体の幅に収まっているので振り遅れることなくタメが作られている。山口すず夏プロ同様に、手元が体の近くを通るため左腕にもゆとりがある。これによってクラブの重心が体に近づき、小さな力で大きなエネルギーを与えることができます。

インパクト~フォロースルー

Point インパクト後もフェース向きが安定している

インパクトでは右ヒジにまだゆとりがあるので、フェースが閉じはじめるのはもう少し先のタイミング。厚く当てながらもインパクトゾーンでのフェース挙動が安定している、いい振り抜き方です。右ヒジが曲がったままインパクトを迎える選手の共通点ですが、フォローでは体の側屈が入るため正面からのアングルでは右肩が下がって見える。右肩が下がれば下がるほど、クラブ軌道はインサイド・アウトになりやすく、アームローテーションの必要性は高まります。それを嫌ってか古家プロの場合は、右肩を下げすぎない意識をもっているように見えます。

古家翔香
●ふるや・しょうか/1999年生まれ、東京都出身。154cm。ツアープロとしては珍しく、ティーチングプロ資格も取得していて、2023年にJLPGA入会。2024年のプロテスト合格前には、ステップアップツアーにも出場し、数多くの予選通過、上位フィニッシュを果たしている。はまだ産婦人科所属。

強靭な体幹力のなせる超絶時間差スイング

神ワザPoint

古家プロ同様に切り返しでの踏み替えが上手だが、荒木プロの特徴はそのスピード。アッという間に左足に圧力がかかることで一気に骨盤が開き、上半身との捻転差を生んでいる。

アドレス~バックスイング

基本的にはバランスのいいアドレスですが、ストロンググリップとスタンス中央寄りのボールポジションが特徴的です。球がつかまりやすいグリップをしながら、右方向へ打ち出しやすいボールポジションにすることで左へのミスを防いでいるのでしょう。バックスイングでは股関節を優先的に使っていくタイプで、上半身と下半身の捻転差はあまりないですが、すでに右股関節付近のズボンには大きくシワができています。

トップ

Point 下半身のターンが深く上半身との「ズレ」が少ない
Point 瞬間的な左足への圧力移動によって骨盤が開く

右股関節のシワは、トップでさらにはっきりと深く入っています。肩の向きは骨盤の向きと同じくらいなので、やはり捻転差はあまりない。逆にここからねじれる「ゆとり」が残っているので、切り返しで下半身から動き出したときに上半身の動きとの時間差(ズレ)が生まれ、それによってねじれを作っていく。フェース面は空を指し、かなりシャットな状態です。

切り返し~インパクト

Point 左右の手が入れ替わっておらずフェースの開閉が極めて少ない

下半身が大きく先行し、肩を残して大きな捻転差を生みながら切り返していきます。おヘソが完全に正面を向きながら、左肩の側面にあるワッペンも正面を向いているのがその証拠です。腕とシャフトが作る角度がかなり鋭角に見えますが、これは手首が曲がっているだけではありません。コックの角度に加えて、シャフトが背中側へ倒れているため正面から見たときの角度が鋭角になっている。こうなるとスイング軌道はインサイド・アウトになりますが、もともとストロンググリップなので相性はグッドです。

フォロースルー~フィニッシュ

インパクトからその直後にかけ、右ヒジが体につくくらい近くを通る。そして右手と左手が入れ替わっていないため、フェース面は真っすぐ長く動いていることがわかります。今回ピックアップした選手全員に共通する特徴ですが、インパクト前後で右ヒジを曲げて体の近くにクラブを通す動きがあり、ヘッドをボールに届かせるため側屈が深くなります。しかし、荒木プロのそれはかなりの柔軟性が必要なため、中高年ゴルファーたちは無理にマネしてはいけない部分です。

荒木優奈
●あらき・ゆうな/2005年生まれ、熊本県出身。156cm。今季のQTランキング37位で前半戦にはほぼ出場可能。今季開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」では、早速7位Tでフィニッシュし、結果を残した。ルーキーイヤーで優勝を手にできるか楽しみな選手。Sky所属。

男子にも負けないスイングが魅力! 山口すず夏選手・古家翔香選手・荒木優奈選手のご活躍にご期待ください。

解説=アッキー永井
●ながい・あきふみ(永井研史)/1987年生まれ、神奈川県出身。“アッキー”の愛称で親しまれている人気コーチ。人体解剖学や物理学の視点を取り入れたわかりやすいレッスンに定評がある。

写真=小林司
撮影トーナメント=Vポイント×SMBCレディスゴルフトーナメント

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