武井壮、中島啓太とプレー&トーク!「強さのワケ」を聞いた

百獣の王こと武井壮が、プロゴルファーを目指していろいろな経験を積むのがこの企画。

今月のゲストは、国内にとどまらず世界での活躍も期待される若手のホープ・中島啓太プロ。トップ・オブ・トップのゴルフを目の当たりにして武井が思い感じることとは?

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トップは作るもの「できた」という感覚がある

武井 この時季に中島啓太プロとラウンドできるなんて。今日は自分のプレーは二の次で、かなりガチな質問攻めになってしまってすみません(笑)

中島 僕も武井さんとご一緒してみたかったので。

武井 「こんなふうにゴルフができたらいいな」と、僕が思っていることを全部やってくれて、それを間近で見せてもらって、アドバイスまでしていただいて、感謝しかないです。そのひとつがトップのお話なんですが、やってみたら後半からいい球が出るようになりました。

中島 タイミングの取り方が変わって、ボールに力が伝わるようになりましたよね。武井さんはアイアンのタイミングの取り方はいいのに、ドライバーは少し“間”の取り方がよくなくて。

武井 打ち急いでしまうのか左に飛ぶ。これはよく起こるミスでしたが、その原因がトップにあるという感覚や意識はこれまでありませんでした。

中島 僕はスイングのなかに「トップができた」という感覚があって、自分が理想とするトップの完成形から切り返す。自分が動きやすいと感じる筋肉のハリや場所があるんです。

武井 「自分が動きやすいと感じる」というのがキーワードで、だからトッププロでもみんな形や力の入れ方、抜き方が違ったりするんですね。

中島 そうですね。僕の場合は、アドレスの時点で腹筋に力を入れているんですが、力を入れておけば全部一緒に動く。トップまではそれだけ。切り返しは右の股関節に乗って、一瞬スクワットを入れる感じが一番動きやすいです。

武井 ローリー・マキロイもそんな感じだし、スイングを説明するときそういうことをいいますよね。バックスイングで、ワキがあくとかヒジが離れるとかは?

中島 考えてもいないし、意識もしていません。もしかしたら、武井さんは考えすぎなのかもしれませんね。それよりも、右に重心が全部いってしまうと戻れない。動画を見ると頭半分くらいは右に動きますが、その場で回転しているイメージのほうがいいと思います。

武井 スエーしがちな点も指摘してもらいましたが、本当にトップの作り方だけで間ができてタイミングがよくなったから、それだけでもある程度まとまったレッスンフィをお支払いしたくなりました(笑)

Z世代のプロはマネジメントの仕方が違う

武井 中島プロとはじめてお話ししたのは、昨年の三井住友VISA太平洋マスターズのプロアマ戦に出場したときでしたが、あれからどんな成長をしましたか?

中島 スコアが崩れないように耐えれるようにはなりました。でもまだ、爆発的なものというか、決定打になるようなショットが打てません。

武井 今の成績でも?

中島 4日間72ホール戦って、完璧なショットは2、3回しかない。それが勝負どころで打てません。たとえば180ヤードくらいのセカンドをビタッとピンにつける。流れが変わるような1打が打てるようになりたいです。

武井 まだ技術的なことが足りない?

中島 技術不足もですが、攻める気持ちですね。どうしても逃げが入ってしまう。たくさん失敗してきましたが、引きずるような失敗が頭のなかに残っていて……。ショートサイド(グリーン外からピンに近い側)を攻めて、絶対に寄らないバンカーに入れてしまいボギーを打ったり。それが消えないんですよね。

武井 僕も最近、その気持ちが少しわかるようになってきて、北九州オープン、ゴルフパートナープロアマに選手として出場してプロと回ってみて、それまでは、プロはやるべきことさえやればそこに球が出て、多少ズレたとしても狙ったエリアに飛んでいくもんだと思っていたら、こういう球筋であそこに打ちたい、あそこには打ちたくないというのを前提にプレーしていました。

中島 最初に頭に浮かぶのが「ボギーを打たない」で、バーディを獲りにいくよりボギーを打たない思考になってしまうんです。

武井 そう思いますよね。でも、最近の若いプロたちは、ジュニアやナショナルチームのときから、トレーニングにしてもコースの攻め方にしても、もう一段上に行くための考え方や取り組み方の積み重ねをしているなって感じます。だから、プロの試合に出場してもいきなりいいプレーをして、優勝争いまでする。それを見て「あんな攻め方ができるのはまだアマチュアだからだ」なんていう声が結構ありますが、マネジメントやスコアの作り方が米ツアーのレベルに近づいてきたというか、変わってきていていますよね。

中島 同世代のプロは、海外志向が強いですからね。蝉川は同い年で、アマチュアで日本オープンを制しましたが、彼の攻めは半端ないです(笑)

武井 ティーショットもセカンドも「マジか!?」ってところを攻めてきますよね。

中島 ラフとかも関係ないですからね。ショートサイドもバンバン攻めてきますけど、まだ、のちに引きずってしまうようなミスになったのを見たことがないんですよ。引きずるような失敗をしたときに、どんな発想をするのか気になります。

賞金王よりもスタッツ1位を独占したい

武井 日本ではプロとしての実績を確実に残してきている中島プロですが、その先の目標は海外ツアーですよね。

中島 今も最優先は米ツアー参戦です。コンフェリー(アメリカの下部ツアー)のQスクールで上位に入って、PGAツアーに上がるというのが一番の近道なんですが、コンフェリーのレベルが本当に高くて。

武井 下部ツアーでもトップに入るのは、日本のトーナメントで優勝するくらいの難しさがありますよね。

中島 パッと行って通用するものではないと、今年の年明けに海外の試合に出て思いました。松山英樹さんにも「1年間やっているなかで優勝争いして勝てるか勝てないかだから、スポットで来て通用するものではない」とおしゃっていました。

武井 実際に戦う舞台での準備と経験が必要だと。

中島 そもそもどうやって打ったらいいかもわからない。とくに芝が違いすぎて、この芝でこうやって打ったらどんな球が出るのか、練習ラウンドしてはじめて知る。知っても、それを試合でやるのは勇気がいります。じゃあ、そこへは打たないように逃げたマネジメトをするとスコアを伸ばせない。そういう難しさを感じますね。

武井 でも、それさえ積んでいけば勝負になる感覚はあるんですよね?

中島 やるべきことはわかっています。米ツアーの選手はショートサイドからのアプローチのほうが楽だといいます。グリーンの傾斜がきついので、ピンから遠い側からだと難しい。ショートサイドだったら、ちょこんと打てばツーと転がって寄ってくれるという感覚なんですよね。そこ(ショートサイド)を狙う勇気も必要だし、狙ってこぼれたときの短いアプローチを深いラフから寄せる練習も必要だと、やるべきことははっきりしています。

武井 それを積み重ねていけば、国内賞金王もついてきますね。

中島 賞金王よりスタッツ(部門別データ)で1位を獲りたいですね。獲れるなら全部門獲りたいですが、とくにパッティングのランキングを上げたいです。

武井 パット数を減らすために取り組んでいることはありますか?

中島 じつは、下りのフックが苦手で、下りのフックラインにつけないマネジメントをしています(笑)。でも、上りのスライスにつけたとしても、入らずにオーバーすると下りのフックが残ってしまう。そういうことを考えすぎてしまうのがダメなのかもしれませんね。

武井 それで消極的になって、届かずショートすることもありますよね。ショットに関しては何かありますか?

中島 メカニカルな部分ではないです。

武井 自分のなかでは理想的な動きができている、トレーニングもそこに向けてしっかりできている?

中島 はい。

武井 僕もそうはっきりといえるようになりたいわぁ(笑)

松山に続く4大メジャー制覇の可能性は?

武井 昨年はマスターズ、全米オープン、全英オープンと4大メジャーの3大会に出場。「中島啓太ならいつか」という期待をもってもいいですよね?

中島 そう遠くないうちに「いつか」ということで(笑)。実際に足りていないことがかなり多いので。全米オープンのコースセッティングの難易度は異常で、昨年、出場したとき松山さんに「全米オープンはアメリカでナンバー1のゴルファーを決める試合だからスポットできても無理だよ」といわれました。まったくそのとおりだと納得しました(笑)。全英オープンは距離が短いから一番簡単に思えましたが、そのぶんスコアが伸ばし合いになる。でも今はまだそれについていけない。マスターズに関してはオーガスタがあんなにも難しいとは思いませんでした。

武井 オーガスタは何が一番難しかったですか?

中島 グリーンがめちゃくちゃ小さいんですよ。テレビでは大きく観えていたんですが、小さいうえに傾斜がきつい。

武井 転がりはじめてから90度くらい曲がってカップに寄っていくのは、マスターズならではのシーンですよね。

中島 ギャラリーはそれを期待しているし、寄せ切る選手もいますが、あれはどれもスーパーショットですよ。すごい狭いエリアでやっていることで。しかも、グリーン側から芝を刈っているので、グリーンに向かってはどこも逆目になる。その逆目が結構強くて、ショットもアプローチも距離感を出すのが至難の技でした。当たり前のことと思われるかもしれませんが、ちゃんと当てることが必要ですね。

武井 松山プロは、そんな状況からピンに寄せてくるのか。

中島 あれは神技です。しかも、神技を連発するんですから尋常じゃない(笑)。1ヤード間違ったらグリーンに乗らない、グリーンからこぼれてしまう世界。

武井 どうやって打っているか聞いてみましたか?

中島 「ボールだけを打っている」といっていました。

武井 それだけ?(笑)

中島 いや、逆目だから刺さないといけないと思うんですが、きっと自信があるからこその言い方かな、と。ほかにもオーガスタはバンカーもヤバくて、出ない難しさはありませんが、出してさらに寄せるとなると本当に難しい。入ったら寄らないのに、僕はそのバンカーによく入ってしまうんですよ(笑)

武井 へー。テレビで観ていると、そこまでの難しさは伝わってこないですね。

中島 12番のパー3、わかりますか?

武井 タテ幅の狭いグリーンに、グリーン手前にクリークが流れていてるホール。

中島 そうです。150ヤードくらいなんですが、練習ラウンドから試合までを通して1度も乗りませんでした。

武井 中島プロなら、9番アイアンかウエッジですよね!?

中島 乗らない一番の原因は風ですね。マスターズって木の配置も考えられていて、12番のティーイングエリアがアゲンストでも、グリーン上はフォローになる。その情報は選手もキャディも周知のことなのに、ティーイングエリアで感じるアゲンストのまま打ってしまうんですよね。手前がクリークだしガツンと打ってしまう。

武井 飛びすぎてしまう?

中島 はい。奥のブッシュ行きで、2日目にはダボを打ってしまいました。ババ・ワトソンと一緒にまわったのですが、ババは距離を測っていませんでした。

武井 感覚で番手を決めて打つんでしょうね。そうなると、対オーガスタは経験がものをいうようになりますね。

中島 よかったことといえば、雰囲気が最高でした。「雰囲気に酔う」というのはこういうことか、と思いました。

強さのワケは盟友・金谷拓実の背中と存在

武井 中島プロを「プロ」とお呼びしていますが、じつは昨年の9月にプロになったばかりで、昨年の海外メジャー3試合は、アマチュアとして出場したんですよね。

中島 はい。今、まだプロ1年目です。

武井 アマチュア世界ランキング1位を、史上最長記録となる83週連続キープし続けて、アマチュアのなかでは1番うまかったわけじゃないですか。

中島 ランキングの数字上ではそうですね(笑)

武井 僕は目指している道の先頭を走ることは、すごく重要なことだと思っているんですが、それを達成できた要因はなんだと思います?中島プロほど強くなれたのは技術なのか精神的なことなのか、とても興味があるんです。

中島 金谷拓実さんの存在ですね。2コ上ですが、いつも遠征などで一緒にいた先輩が、アマチュアでツアー優勝して、世界アマチュアランキング1位になってマスターズに出場。それと同じ道を進むというより「僕も達成するしかない」と思う一心でやっていました。金谷さんの背中を見ながら、使命感みたいなものを感じていましたね。

武井 その使命を達成できるという自信や可能性みたいなものは感じていた?

中島 感じていたというか、ただ、やるしかなかったです。ひたすら練習、トレーニング、全部やるだけ。

武井 その思いがあって、足りていたからできたのか。

中島 そのころのチーム内はタテのつながりが強くあって、僕で途切れさせてはいけない。下へつなげていかなくてはいけないという思いもありました。

武井 なるほど。結局、できないのは足りていないだけで、足りていればできるってことですね。今日はさまざまな角度からモチベーションが上がるお話が聞けて、高額の謝礼をお支払いしたいくらい。代わりに走り方ならお教えできるんですが(笑)

中島 金谷さん、めっちゃ脚が速いですよ。あと比嘉(一貴)さんも!

武井 そのお二人からもぜひゴルフの話をお聞きしたいですが、脚での勝負は絶対に負けません!

いかがでしたか? 中島プロの今後に注目していきましょう。

中島啓太

●なかじま・けいた/2000年生まれ、埼玉県出身。177㎝、75kg。2021年には日本人最年少記録の20歳5カ月1日でアマチュア世界ランキング1位、「パナソニックオープン」で男子ツアー史上5人目のアマチュア優勝を成し遂げた。今季は6月までの9戦で1勝、6試合連続で最終日最終組を記録。賞金ランキングのトップを走る。フリー。

武井壮

●たけい・そう/スポーツ、芸能の枠を超えて活躍するマルチタレント。YouTubeでは「武井壮百獣の王国」を配信中。
●オフィシャルサイト gogotakei.com/
●twitterアカウント @sosotakei
●インスタグラムアカウント sosotakei

写真=田中宏幸
協力=鴻巣カントリークラブ

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