
女子プロ3人の飛ばしメカニズムを解説!クラブをうまく「走らせて飛ばす」
連続写真で上達を目指すレッスンでは、2025年シーズンに注目したいルーキー選手をスイングタイプ別に分けて紹介します。
今回は、クラブをうまく「走らせて飛ばす」タイプの3選手をピックアップ!
効率のいいクラブの動かし方のメカニズムを、アッキー永井コーチが解説します!
まずは青木香奈子選手のスイングから。
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【青木香奈子】アドレス~バックスイング

どこにも極端な部分がないニュートラルなアドレスです。強いて特徴をいえば、スクエアグリップであること。始動後すぐに左手甲が見えてくるので「真っすぐ引く」というよりは、腕のローテーションを自然に入れながらバックスイングをしています。
シャフトが地面と平行になった段階でフェースがほぼ正面方向を向いているので、フェースの向きはスクエアか若干オープン。また、手首の角度が浅いのでコッキングの動作は遅めです。
トップ

正面から見て、ウエアの背中のデザインが見えるほど肩が回転しています。ここまで回転が深いと、ダウンスイングではインサイド・アウト軌道になりやすく、フェースを閉じすぎるとフックボールのミスにつながることも。それを避けるため終始スクエアからオープン気味にフェースを管理しています。
下半身は、アドレスのときから微動だにしない右足が特徴的。かなりのプレッシャー(圧力)を右足にかけています。
切り返し~ダウンスイング

切り返しのあと、左腕が地面と平行のポジションでシャフトがかなりしなっています。クラブに力をか
けられている証拠ですが、これはコックを浅めにキープしていることによる効果。切り返しで体の運動
方向(ダウンスイング方向)とクラブがもっている勢いの向き(バックスイング方向)は反対になりま
す。
クラブの運動を受け入れるなら、本来は手首が曲がりますが、それをあえて浅めのコックを保つことによってシャフトに負荷をかけている。青木選手は細身な体をしていますが、じつは関節や体幹部分の強さは女子プロでもトップクラスといえます。
インパクト~フォロースルー

インパクトでは左右の腕がほぼ伸びきり、その直後には左手がほとんど見えないので、腕がローテーションしていることがわかります。このローテーションは自分で能動的に行なっているのではなく、あくまでクラブの遠心力によってうながされたもの。
また、両足が地面から離れるほど地面反力を使っており、この力がクラブを効率的に走らせ、走ったクラブの遠心力によって腕が伸ばされている。自身の力だけでなく外力(地面反力)も使う、レバレッジの効いたスイングです。
神ワザPoint

トップまでの手首の角度が浅く、切り返し時に体にかかる負荷は大きいが、ダウンスイングで上体が下半身に対して遅れすぎることがない。ここまで体幹を強く使えるのは女子プロのなかでもかなり珍しい。
続いては六車日那乃選手のスイングを紹介します!
【六車日那乃】アドレス~バックスイング

体勢やグリップはニュートラルですが、ティーアップの位置はスタンス中央寄り。始動は体重移動をきっかけにするタイプで、体全体が一瞬、右足方向へ沈むような動作が入る。
2本足で立っている物体の一方の柱(足)を外すとそちらの方向に崩れますが、その「崩れ」を一瞬だけ利用して動き出しています。シャフトが地面と平行になる時点で、フェースが地面を向いているので腕のローテーションは少なめです。
トップ~切り返し

オーバースイングに見えるトップポジションですが、ツアープレーヤーのなかにもオーバースイングの選手は少なからずいて、必ずしも悪ではありません。六車選手は体幹や肩の柔軟性がとても高いため、クラブがもっている勢いでトップが深くなるタイプ。
切り返しでは手元がグッと地面に向かっていくので、垂れ下がっていたクラブヘッドが1度持ち上がるような動きをします。
ダウンスイング~インパクト

ハーフウェイダウンでは左腕が胸についており、体幹部分の回転に対して腕がやや遅れています。この形になると多くの場合はインサイド・アウト軌道が強くなり、インパクト時は左足寄りにティーアップしたボール位置だと、フェースのヒール寄りが当たりやすくなってしまう。それを避けるため、スタンス中央寄りにボールをセットしているのでしょう。
フォロースルー

左腕は伸び切っており、クラブに最大限の遠心力がかかっています。タメがキツくないので手首に対するクラブの運動はおだやか。フォローでの腕のローテーション、手首の動きなどがとても少なく、フェースアングルが安定する。今回ピックアップした3選手のなかでもとくに右から左へのシフトがなめらかで、体重移動を上手に使ってクラブを加速させています。
神ワザPoint

六車選手のいいところは、とにかくムダな筋力を使わないこと。始動で一瞬、体重を抜いてから右足に一気に体重がかかり、その力を利用してバックスイングをします。インパクトからフォローにかけてもヒジから手先まで力が抜けていて、いい意味でクラブを操作していません。
最後は吉田鈴選手に注目です!
【吉田鈴】アドレス~バックスイング

ボールのポジションが特徴的です。かなりスタンスの中央寄りにティーアップされており、ドライバーなのにシャフトがターゲット方向へ傾いている。ロフト角が減った状態でセットされているため、通常の打ち出し角度を得るのにスイングのどこかで調整されることが予想できます。
テークバックではさらにフォワードプレスを入れているので、手首の「引っかかり感」を感じたいのでしょう。バックスイングをスムーズに上げられないと悩んでいる人は、このフォワードプレスをマネてもいいかもしれません。
トップ

顔がうしろを向くほど上体が回ったトップポジションです。腕が頭のうしろに隠れているのは体の前から外れているのではなく、上体の回転が深いため。ここまで深く捻転されたトップポジションだと、ダウンスイングで腕が遅れすぎて、いわゆる「振り遅れ」になってしまいがち。アマチュアがマネする際は方向性とのバランスを見るなどの注意が必要です。
切り返し~ダウンスイング

【Point】手元は低く左足は力の出せるポジションにある(写真右)
切り返しのこのひとコマはまさに“神ワザ”。トップから体がスッと沈み込み、その間に踏み込みを左足へシフト。次に地面を蹴っていくときには、骨盤をしっかりと開くことができます。
また、肩が開いておらず、腕に力も入っていないことから、体幹部の強さと肩のやわらかさを感じます。通常は手や腕に力が入って胸が開いたり、手首の角度が浅くなったりしやすいのですが、吉田選手にはまったくその傾向がありません。
インパクト

インパクト直前では手元が低い位置を通り、左足は内側へ傾いています。これは足の蹴りが体を上方へ引き上げ、手首が支点となってクラブのリリースを加速させているためです。インパクトを見ると、両足が伸び切るのと同時に手首の角度もほぼ解放しきっているので、ヘッドスピードが最速になる。
また、頭の位置をアドレス時より後方へ移動させながら体の軸を少し右サイドに倒すことで、インパクト時のロフト角をかせいでいます。
神ワザPoin

吉田選手の特徴は、切り返しでの骨盤の動き。1度足から力が抜けてスッと沈み込み、その間に骨盤の向きを変えて踏み込む足を左へシフトする。この2枚目(写真右)の形になれば、地面を蹴る準備が完了。ヘッドスピードを限界まで速くすることができる。
いかがでしたか。注目ルーキー3選手のスイングをぜひ参考にしてください!

解説=アッキー永井
●ながい・あきふみ(永井研史)/1987年生まれ、神奈川県出身。“アッキー”の愛称で親しまれている人気コーチ。人体解剖学や物理学の視点を取り入れたわかりやすいレッスンに定評がある。

青木香奈子
●あおき・かなこ/2000年生まれ、宮崎県出身。166cm。今季はJLPGAツアーとステップアップツアーの両方に出場し、4月にはステップアップツアーの「大王海運レディスオープン」で初優勝を達成。人気と実力を兼ね備える期待の星。マイナビ所属。

六車日那乃
●むぐるま・ひなの/2002年生まれ、埼玉県出身。154cm。ジュニア時代には数々の功績を残し、プロテスト合格後の今季の前半はステップアップツアーが主戦場。「フンドーキンレディース」では、4位と好成績をあげている。ニトリ所属。

吉田鈴
●よしだ・りん/2004年生まれ、千葉県出身。153cm。姉は吉田優利、姉妹プロとしてたびたび話題になる選手。今季はレギュラーツアーの開幕戦からの7試合に出場し、5戦予選通過するなど安定感がある。初優勝が待ち遠しい選手。大東建託所属。
写真=小林司
撮影トーナメント=Vポイント×SMBCレディスゴルフトーナメント
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