プロ18年目・女子プロが語った1度もブレずにいる信条とは?

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフをよりよいものにしていくためにさまざまなことを考え、走り続けている。どんなことを考え、どのようにゴルフと向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。

衰えを知らないドライバーの飛距離が、多くのギャラリーを魅了し続ける。これまで13年連続シードを守り続け、4月の「ヤマハレディース」で2年ぶり通算6勝目をあげた穴井詩。その半月ほど前に行なわれたインタビューで、今シーズン開幕を迎えるまでの近況や、ゴルフをはじめてから1度もブレずにいる“信条〞について話を聞かせてもらった。

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「やっぱり若いころとは違う部分もあります」

──プロ18年目が開幕しました。シーズンオフはどのように過ごしましたか?

穴井 いつもどおりです。トレーニング量も変わらずですが、昨年はいい手応えでスタートできたけど、今季はまだ少し不安がありながら開幕した感じですね。

──不安とは、具体的に?

穴井 まず、アイアンのキレです。これは試合のなかで調整していくことになります。ドライバーはまだ全然わからないですね。

──トレーニングの効果は出ていますか?

穴井 いえ、やっぱり若いころとは違いますね。たとえば筋肉が落ちるのが早くなりました。今までより早いペースでトレーニングを入れていかないと、以前と同じ筋肉量を維持できないんです。

──2勝した23年シーズンと今、自身の変化を感じますか?

穴井 スイングに関して、今は可動域が広がりすぎてしまったことによるオーバースイングに少し悩んでいます。可動域が今ほどではなかったころのほうが、逆にいい結果が出ていましたね。

──体が動きすぎるのもダメ?

穴井 そうですね。どちらがいいのか、それを模索中です。

──昨年はどんな年でしたか?

穴井 じつは昨年は、スタート前にある計算をしてしまったんです。

──どんな計算を?

穴井 シード権をとるためには、1試合平均何ポイントとっていけばいいかのを(苦笑)

──それは興味深い(笑)。その結果は?

穴井 最終的にランキングが平均ラインの少し上、という(笑)

──それは、穴井プロ的にはよかった?悪かった?

穴井 よくなかったかも。今思うと、そんな計算をしていたために無意識に安全なプレーに走ってしまっていたのかなって。

──今年はその計算はやめた?

穴井 はい。改めてメジャー優勝という目標に向かいたいです。そのためにはすべてのレベルを上げなければならないので、これからやることがいっぱいです。

──とくに上げたい部分は?

穴井 第一にティーショットの正確性ですね。ラフに入ってしまうとひと手間増えてしまうので。今年はここにこだわりたいです。

──正確性を上げるために、取り組んだことはありますか?

穴井 腕のポジションが外れないことが大事なのですが、そればかり気にしていると振れなくなって結果、曲がってしまう。しっかり振れていたほうが個人的には曲がらない球が打てるので、試合を重ねていくうちに自信をもって振れるようになれば、正確性もついてくると思っています。

──そこは練習量を増やして克服していく?

穴井 練習でいくらうまく打てても、本番でいい球が出なければ意味がないので。試合の緊張感のなかでどのくらい打てるかが大切ですね。

「うまくなりたい」という気持ちがなくなったら

──穴井プロがゴルフをするうえで、今1番モチベーションになっていることは?

穴井 それはずっとひとつしかなくて「とにかくうまくなりたい」です。一流どころと呼ばれる選手たちみたいになれたらっていつも思っています。

──たとえばどんな選手みたいになりたいですか?

穴井 最近だと古江彩佳ちゃんや山下美夢有ちゃん。どんな状況でもスイングのリズムがまったく変わらない。スイングの再現性が高く、自分にはないものをもっています。もちろん年間女王の(竹田)麗央ちゃんもそう。そのレベルを目指したいんです。

──今季のプレー、データ的にはどの部分を意識しますか?

穴井 平均ストロークとパーオン率を上げていきたいです。とくにパーオン率は私の生命線なので、できれば80%を目標にしたいですね。そのためにはやはり、ドライバーをフェアウェイにおくことが大事になります。

──まだ先のように感じますが、ご自身で「いつか引退する」イメージができますか?

穴井 今はまだ想像がつきません。「うまくなりたい」という気持ちがなくなったときが、クラブを置くときじゃないですかね。

──ゴルフ以外で気分転換は?

穴井 韓国ドラマ観たり、それとK-POPアーティストに推しがいるんですよ。ステージの完成度がすごいんです。あの体のキレを出すのにどれだけの努力とトレーニングをしてきたのか、と思うとリスペクトが止まりません。

──アスリートとして見てしまっている?

穴井 そうかもしれません(笑)。私もガンバらなきゃって刺激をもらっています。

──穴井プロにとって「ゴルフ」とは?

穴井 生きるための「術すべ」ですかね。ゴルフを続けてきたなかでいろいろありましたが、ずっと一貫しているのは「うまくなりたい」という気持ちです。これは1度もブレていません。

──「うまくなりたい」に終わりはない?

穴井 ないですね。メジャーを勝ったとしても、そのときに足りなかった部分を見つけて、それを改善するためにまた練習をするんだと思います。

開幕戦翌週のインタビューだった。去り際に「また葛城(ヤマハレディース)で勝ってくださいね」と声をかけた。2023年にプレーオフを制して勝利し、2度ガッツポーズを見せたあの大会だ。「そうなったらいいですね」と穴井プロは笑った。

彼女はまだ知らない。この半月後、その「ヤマハレディース」で2年ぶりの優勝を飾ることを。インタビューで、何度も口にした「もっとうまくなりたい」という言葉が私の脳裏によみがえる。きっとこの優勝の翌日も、自身が納得いかなかったところの調整に励むのだろう。

これこそが穴井詩。その向上心は「優勝」くらいではまったく揺らがない。

文=ひよこきんぎょ 
写真=田中宏幸 
協力=KURE×LADYGO CUP

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