
正しいフェースローテーションとは?3つのポイントをプロコーチが解説
ツアープロの復活優勝や初優勝に貢献し、注目を集める柳橋章徳が中心となり“ゴルフスイングの本質に迫る”チームを結成!体やクラブの使い方の原理原則を追求し、個人の潜在的な能力の限界を突破(ブレイクスルー)するメソッドを紹介しよう。
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フェースの開閉自体は自然と起こる

基本的にフェースはバックスイングで開き、ダウンスイングで閉じる。開きすぎると閉じきれなくなったり、再現性が低下するので、開閉量はある程度の幅の間に収めたい。クラブの重心アングルを目安にすると、最大でも30度オープンから30度クローズになる合計60度以内くらいが開閉量の適正範囲と考えていいだろう
――ここまでスイングの流れを順を追って説明してもらいましたが、その流れから1度離れて、今回は「フェースローテーション」について教えてください。「積極的にする」ものなのか「自然と起こる」ものなのか、論争は絶えません。
柳橋(以下柳) 基本的には「起こる」ものでありたいですね。
山縣(以下山) これまで説明してきたように、ちゃんとクラブの重心をキャッチしたうえで「引っぱる」動作でスイングできていれば、バックスイングで開いたものは、ダウンスイングで自然と閉じてきます。個人的には開閉が「クラブによって起こされる」と表現したいです。
柳 ただし開閉量やその感じ方は人によって違うので、生じる開閉量が適正な範囲内に収まるようにスイングするために、積極的に「する」意識が必要な人もいれば、むしろ「抑える」くらいの感覚でやっと適正になる人もいる。だからややこしくなるのです。
――フェース開閉量の適正な範囲というのは?
柳 大ざっぱにいえば、クラブの重心角くらいですかね。ドライバーで重心角は大きくても30度以内くらいですから、開閉の総量で考えると60度以内くらいをイメージしてもらえばいいと思います。
安岡(以下安) アマチュアの場合はこれより大きい人がほとんどでしょうね。バックスイングで開きすぎれば戻すのが大変なのでミスになりやすいですし、それでうまく打つには、特殊な代替動作が必要になる。プロには、180度以上開閉する人はいないと思います。
柳 じつは、フェースの開閉は3つの要素で成り立っています。①シャフト軸でのクラブの回転②腕の入れ替え、つまりアームローテーション。それに加えて③ライ角の変化もあります。開閉現象の主となっているのは②のアームローテーションですが、プレーヤー自身は手首や前腕の動きで生じる①の軸回転でフェースコントロールしている感覚が強いですし、ミスするときは③のライ角の要素も大きい。これらのギャップが”フェース開閉論”を混乱させている大きな要因かもしれませんね。
フェースローテーションの3つの要素①シャフト軸回転

シャフト軸でクラブが回転するとフェースは開閉する。スイング中はおもに手首や前腕の回旋などの動きで開閉させるので、プレーヤー自身がフェースを操作している感覚はここから生じているケースが多い
フェースローテーションの3つの要素②アームローテーション

腕の入れ替え=アームローテーションによってクラブのポジションが入れ替わると、それにともなってフェース面の向きも変わる。スイング中のフェース開閉の最大の要因は、これで生じている
フェースローテーションの3つの要素③ライ角の変化

ライ角が変化することによっても、フェースの向きは変わる。手元が上がってクラブがアップライトになればフェースは右を向き、手元が下がってクラブがフラットになればフェースは左を向く
フェースの操作感はグリップによって変わる

左手をヨコからそえるウィークグリップで握り、右足前から左足前までクラブを引っぱりながらヘッドを引きずるように動かすと、手のなかにフェースが開こうとするトルクを感じる。そのためウィークグリップの人はこれに逆らってフェースを閉じる感覚がフェースコントロールのベースになる

左手を上からかぶせて握るストロンググリップで、右足前から左足前までクラブを引っぱりながらヘッドを引きずるように動かすと、フェースが閉じようとするトルクを手のなかに感じる。そのためストロンググリップの人は、これに逆らってフェースを開く方向への出力がベースとなる
クラブと腕の重さを感じることが大事

腕とクラブの重さを感じながらスイングできれば、手のなかでの圧力変化やフェース向きのトルクを感じることができる
――フェースの開閉は「起こされる」のがベースとはいえ、やはり自分で加減したり調節したりはするわけですよね。
柳 はい。ほとんどの人が、うまく打つ、つまり適正なフェース開閉量でスイングするために、何らかの形でそういう操作感はもっていると思います。
安 その日の調子によって、やたらと球がつかまる日や全然つかまらない日もあるので、それをアジャストしながらプレーしていることもあります。
――具体的にはどうやって?
安 手首や前腕の感覚だと思いますが、ここらへんの感覚は本当に人それぞれなんです。グリップの握り方によってもフェースの開閉感は全然変わるので、トルクの出し方も逆になります。
――トルクの出し方?
安 ウィークグリップで握っていると、インパクト前後でフェースが開こうとするトルクを感じるので、それにあらがって閉じる感覚が必要です。反対にストロンググリップだと、インパクト前後でフェースが閉じる方向のトルクを感じるので、プレーヤー自身は開く方向に出力する必要がある。これは、極端なウィークグリップとストロンググリップで、右足前から左足前まで、リーディングエッジで地面をコスるように素振りしてみるとわかりますよ。
柳 このトルクを自分がどう感じてどう制御するかが、フェースコントロールのキモだと思います。その前提として、手のなかでこのトルクを感じられなければ話になりません。そのためには「重心をキャッチ」した状態でスイングすること、クラブの重さを感じながらスイングすること。これらができていて、はじめて遠心力をフル活用でき、それによってフェース開閉が「起こされる」んです。
山 クラブだけじゃなくて、自分の腕の重さも感じられるようになってほしいですね。
――腕の重さですか?
山 人間の腕は結構重い。片腕で体重の約6%といわれていますから、体重50キロの人なら両腕で6キロくらいあります。これはクラブよりもずっと重いわけですから、この重さが感じられないようでは、手のなかに生じるクラブのトルクを感じることはできませんよ。
やっぱり基本はココ!腕とクラブの重さを感じることが大事

クラブを持ち上げてバランスよく支えられる力感(右)
手のなかでフェースの向きの変化につながるトルクを感じられないと、フェースの繊細なコントロールはできない。そのためにはリキまずにクラブと腕の重さを感じ、「重心をキャッチ」した状態でスイングすることがとても重要だ。リキみやすい人は、最初はクラブの重さに「負け切る」ところからはじめよう

いかがでしたか? 体やクラブの使い方を参考に、練習してみましょう!

安岡幸紀
●やすおか・ゆきのり/1988年生まれ、高知県出身。高知高校ゴルフ部で活躍。卒業後、指導者の道に進み、日本プロゴルフ協会のティーチングプロA級を取得。現在はCHEERS GOLFの代表を務め、柳橋らとともにゴルフの原理原則の研究を行なっている。

山縣竜治
●やまがた・りゅうじ/1982年生まれ、山口県出身。國學院大学の野球部で選手とコーチ業を兼任。運動学やチーム指導などを幅広く学び、トレーニング部門も自身の体を実験体に専門的に経験。現在はゴルフの解剖に力を入れ「太子堂やまがた整骨院」で総院長を勤める。

柳橋章徳
●やぎはし・あきのり/1985年生まれ、茨城県出身。最先端のスイング理論を研究し、ツアープロコーチとしても活躍中。その手腕によって復調やレベルアップした選手が増えている。YouTubeチャンネル「BREAK THROUGH GOLF」でも上達に役立つ斬新な情報を発信中。
構成=鈴木康介
写真=小林 司
協力=GOLFOLIC中延店
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