
技術の向上×〇〇がレベルアップには必要!ゴルフ博士が解説
ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。
その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。
斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!
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基盤性技術と揮発性技術

パーフェクトな練習環境は簡単には手に入らない
前号では、技術と理解があるレベルを超えると技術と理解は自己増殖する段階に入ってスキルが一気に向上する、という話をしました。ここまでくればしめたものなのですが、このステージではおもしろみが増すと同時に、逆に現在の環境ではできないことも見えてきて行き詰まりも感じるようになります。
卓球やビリヤードであれば自宅に台を置ければ練習環境としてはパーフェクトなものをそろえられますが、流石に自然を相手にするゴルフでは、 時間制のシミュレーションゴルフに通い詰めたとしてもすべてのシチュエーション、たとえばフライヤーを利用して飛距離を調節するようなショットは、芝の上で試行錯誤しなければできないことですから練習するのは不可能です。学生のころのソフトテニスの部活で、毎日ボールを打てるというのは今思えばとても恵まれたことで、どんなボールがきてもスイートスポットで易々と当たり前にボールを打ち返していたものでした。
そういった、何でもできる感覚のなかで昨日の課題を今日解決し、今日の課題は明日解決するということを繰り返していればうまくならないわけはない。このような濃縮した状態で積み上げた技術は体の奥底に定着するので、いったん手に入れてしまえばガクンと落ちてしまうことはありません。高校や大学のゴルフ部でゴルフをしっかりやっていたという話はうらやましいかぎりで、そういう意味では3カ月、いや1カ月でいいので毎日ゴルフ漬けの日々を送れば見えてくる世界もできることも違ってくるはずなのですが、仕事をもっているアマチュアの身ではそれは叶わぬ夢です。
私も社会人になってからはじめたゴルファーですが、最近では練習の間があきすぎて、毎回練習で手の皮が剥けてしまうという情けない状態。しかし、ここのところ立て続けに練習場にいくことができて、昔テニスで覚えがある、何も考えずにリラックスして振っても芯を食って軽々と、そして、意図したところに飛んでいくあの感覚が蘇り、あらためて練習頻度の重要性を痛感しています。
練習は技術の向上と感覚の維持のふたつの側面がある
私たちはあまり意識することなく「練習する」と口にしますが、イラストにあるように基盤性技術と揮発性技術(ともに私の造語)というふたつの側面があることを認識しないといけません。基盤性技術は、文字どおり基礎・基盤となるような技術を指します。たとえば地面の上にあるフェースを起こし気味にして、ハンドファーストでボールの北半球側をダウンブローで叩きにいくというのは、少しくらいブレても決してダフらないシステム。
インナーカウンターを当てる際にブロックする左手のポジションを調節するというのも地面を削らないための別のシステムで、これらを組み合わせて利用することによってヘッドスピードを上げて打ちにいってもダフるリスクを低減させることが可能です。これによって、闇雲にピンポイントで狙いにいく必要はなくなりロングアイアン、ミドルアイアン、FW、UTなどでも平常心で、それこそボールを投げるように打てるようになります。こういうセキュアなシステムを基にした技術の習得を「基盤性技術」と呼ぶことにします。
これは、積み上げによって血肉となるもので、いったん身につくと練習頻度を増やさなくても大きく落ちることのない骨格となる技術です。
これに対するのが「揮発性技術」です。たとえば、テニスで差し込まれロブを上げて窮地を挽回しようとするとき、相手のラケットが届かないように強くトップスピンをかけて、高く速く落ちるボールでベースラインに乗るようにするのがベストですが、これが成功するかどうかはすでにトップスピンの技術の問題ではなく、正確にボールをとらえてベースラインをピンポイントにロブで狙える揮発性技術があるかどうかの問題になります。
ここで精度を上げるためには、キャッチボールで弾道と距離感を確認するように、飛距離とインパクト圧との対応関係を「感覚の記憶」としてつねに最新のものにアップデートして保持しておく必要がある。これを怠ると一気に感覚・感度が劣化して思ったプレーができない。アスリートとしてプレーに臨み、相手に勝ちたければこのフィーリングを最高の状態に保っておく必要があるのです。
この揮発性技術の維持というのは、底に穴が開いているバケツに水位が下がらないように注水し続けるようなもので、継続が意味をもちます。恐らくプロでも1カ月もまったく球を打たない期間があったら、あの高いレベルは維持できないはずです。
スポーツにおいて練習量は、ある意味「正義」です。先に述べたようにゴルフですべての技術を高いレベルでマスター・維持することは、練習環境・練習量の関係でも難しい。そこを求めてはアマチュアには答えがありません。多少でも本能を呼び起こす練習方法を工夫して、少なくとも基盤性技術とセンスで勝負する覚悟をもつというのが、私たちのとれる最善の方法ではないかと思います。
いかがでしたか? アマチュアゴルファーは、まずは基盤性技術の習得を目指してみましょう。

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。