【インタビュー】柏原明日架、“ゴルフ人生”を振り返る!「誰か一人でも欠けていたら…」

【インタビュー】柏原明日架、“ゴルフ人生”を振り返る!「誰か一人でも欠けていたら…」

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフを「よりよいもの」にしていくために様々なことを考え、走り続けている。

「どんなこと」を考え、「どのように」ゴルフに向き合っているのか。インタビューをとおして、その姿を探っていく。

今回は柏原明日架プロにインタビュー。20-21年シーズンについて、理想のゴルファー像、オフの過ごし方について詳しく聞けました。

今までで一番挫折した年だった

――20-21年シーズンを振り返ってどうですか?

柏原:シーズンがミックスしたのは初めてだったし、20年は開幕戦が約3カ月遅れたこともあり、そういうことに対応できなかったなと。21年も開幕から最後まで毎週のように試合があるのかどうかという、不透明ななかで調整しなくてはいけなくて、今までどおりとはいかなかったのが本音です。

―― コロナの影響が大きかったんですね。

柏原:試合前にいつもあったプロアマがなかったり、無観客の試合だったり。次の週の試合があるかどうかもわからず、毎週同じ条件で試合が開催されることがほとんどありませんでした。それは私だけじゃなく、みんなそうだったと思うのですが、練習の内容や時間でうまく対応しきれなかった。それが原因で最終戦まで苦しい思いをすることが多かったなと思います。試合が連続してあるとわかっていれば調整もしやすいんですが、20-21年シーズンは調整がとくに難しかったですね。

―― 厳しい年だったんですね。

柏原:シード権の争いはプロ入り2年目のときに経験したこともあったのですが、それ以降は早めに安全圏に入っていたし、優勝もできていたので、今までで一番挫折した年だったんじゃないかなと思います。

―― それでも柏原選手の最終戦となった、大王製紙エリエールレディスで2位タイに入りましたね。

柏原:やるしかないという気持ちでした。自分のなかで秋口を過ぎてから、なんとなくやれる気がしていて、試合をこなしていくなかで、技術的、精神的なことで手応えを感じていました。

―― 具体的にはどういう部分?

柏原:もちろん技術的な面の調子がよくなったことも要因のひとつだと思いますが、やっぱり、気持ちの面が大きかった。ゴルフは心技体といわれるスポーツで、心の状態が成績に反映されるスポーツだと私はずっと思っています。20年や21年の春先や夏の不調は、試合があるのかどうかという不安の表れで、それが成績に出てしまっていたんだと思います。そんな気持ちで試合に挑んでもそれでは勝てないだろうなと秋口に気づきました。

―― では、今はシーズンが終わってホッとしていますか?

柏原:シード権を獲得して安心という気持ちではありましたが、20年から戦ってきて、なかなかうまくいかないと思っていたなかで、エリエールは手応えが結果に結びついた大会でした。勝てなかったことはもちろん悔しかったですが、自分のしてきたことや悩んだ時間は無駄じゃなかったと結果として手応えを感じられた試合だったので、このまま試合を終わりたくないと初めて思ったんです。今までだったらやっと長いシーズンが終わって肩の荷が降りたと思うことのほうが多かったので、こういう感覚は初めて。自分のゴルフに向き合えて、より理解が深まったのかなと思います。なので今は、早くゴルフがしたい、早く開幕戦を迎えたい、自分のゴルフがしたい、という気持ちが強いですね。

人に恵まれて生きている人生

―― 柏原選手の強みはなんですか?

柏原:エリエールが終わったあとに、同級生や仲のいい先輩から「お前メンタル強いよ」と言われました(笑)。「こんな状況でこの優勝争いはできない」とみんなに言われたことで、意外とメンタルが強いのかと思いました。今までメンタルが弱いとか、優勝争いに対して得意不得意は考えたことがなかったのですが、追い込まれるといいのかもしれないと思いました。

―― 理想とするゴルファー像はありますか?

柏原:最近になってすごく思うのは、3日間大会なら、2日目が終わった後に順位はどうであれ、「この選手は最終日ちょっと怖いな」と言われる選手になりたいです。

―― そうなるためには何が必要だと思いますか?

柏原:その一歩として、エリエールでは周りにもその印象をつけることができた大会だったんじゃないかと思っています。それがシーズンを通してずっとできるようになれば、みんなからそういう目で見られると思っています。

―― ご自身で自分のプレースタイルはどう見ていますか?

柏原:攻撃的ではないですね(笑)。自分のプレースタイルはよく理解できていると思います。無理なチャレンジとかは絶対にしないです。エリエールの17番ホール、優勝争いをするなかで「なんで狙わなかったんだ」という声がけっこう届いたんですが、それは自分のプレースタイルじゃなかったから。それでたとえ負けたとしても、1年間を通してやったら自分のしたプレーのほうが勝てる確率が高いんじゃないの? と思っています。

―― 自身のプレースタイルを貫いているんですね。

柏原:その場面場面で試合を切り取っちゃうとみんなそう思うかもしれないし、負けてしまった結果に対してそう言われるのは仕方ないことですが、自分自身では何も後悔なく終わっています。そのプレーが負けに直結しているわけではなく、意外と別のところに原因があるんじゃないかと思っています。意見としてはありがたく受け止めますが(笑)

―― では、「この人がいなかったら今の自分はいないだろう」という人物はいますか?

柏原:すごくザックリになってしまうのですが、誰か一人でも欠けていたら今の自分はいないです。サポートしてくれるスポンサーさんを含め、マネージャー、同期のプロ、仲良くしてもらっている先輩、もちろん両親もそうですし、今年に関しても誰かが欠けていたらシード権を獲得できなかったと思います。初優勝したときも同じ思いを抱いたのを今でも覚えていますね。周りの人たちが本当にいい人ばかりなので、人に恵まれて生きている人生だなとつくづく思います。

―― そういう人が柏原選手のもとに集まってくるんですね。

柏原:それが自分の長所だと思います。なので、そのなかで一人は選べない。みんながいたからこそって思いが強いですね。

―― オフ期間、プライベートでしたいことはありますか?

柏原:私は美容に関することがすごく好きなので、そこに時間を費やせたらいいですね。

―― 本当にお美しいなって思います。

柏原:ありがとうございます(笑)。女子ゴルファーは、体が大きくてゴツくて黒い「ザ・アスリート」のイメージがまだまだ強いと思うのですが、そういった女子ゴルファーのイメージが変わればいいなと思っているし、私自身も美容に関して何か発信できればなと思っています。

―― 最後に22年シーズンの目標を教えてください!

柏原:20-21年シーズンを戦って、最後までシード権争いをするような戦い
をしたくないというのが正直な思いです。早めにシード権を獲得したいし、3勝目もあげたい。アスリートって応援してくれる人に恩返しできるのは結果しかないんですよね。だからそれを目指してやるしかないです!

柏原明日架

●かしわばら・あすか/1996年生まれ、宮崎県出身。171cm。19年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでツアー初優勝し、その年に2勝目をあげる。20-21年シーズンはパナソニックオープンレディスで3位タイ、大王製紙エリエールレディスで2位タイに入り、賞金ランキング46位でシード権を獲得した。富士通所属

写真=相田克己、田中宏幸

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