なぜ“イップス”にかかるのか?克服法は…?パターの名手・佐藤信人が語る

〝イップス〞は 「自分はならない」と思っていませんか?

決して他人事ではなく、ゴルファーなら誰でもかかる。しかもゴルフを一生懸命やるほどかかりやすいんです!

なぜイップスにかかるのか、どんな症状が現れ、どうやって克服するのか。それを事前に知ることが、イップス予防の最善策になります。

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一般アマチュアにも “イップス予備軍” はたくさんいる!

佐藤のイップスはパッティングから。ストレートにフォローを出す練習をしていたところ、無意識にヒジを引いてしまう反応が出て、しっかりとインパクトできなくなってしまった

キャリアの絶頂で得意のパットがイップスになった

イップスは、同じ動作を過剰に繰り返すスポーツ選手に起こる運動障害です。近年は、野球をはじめ、さまざまなスポーツでイップスの症例が報告されています。イップスという言葉はもともと、トミー・アーマーがつけたといわれていて、ゴルファーとイップスの関係は根深いものがあります。

ゴルフでは、おもにパッティングとアプローチにイップスの症状が出る人が多いですが、ドライバーイップスのゴルファーも少なくありません。イップス症状が起きると、手先がしびれたり、腕が思うように動かず、とんでもない大きなミスが出てしまいます。

私のイップスは2003年から表れました。きっかけは、パッティングの成績がよかったので、シーズンオフにパッティングのストロークを解析するという雑誌の企画を受けたことです。透明なボードの上で、下から私のストロークを撮影するというものでした。

それを自分で見てみると、かなりアウトサイド・イン軌道のストローク、いわゆるカット打ちになっていたのです。じつは前年のシーズンの終わりにパッティングの調子が悪かったこともあって「こんなストロークをしているからパッティングが入らないんだ」と思ってしまったのです。

きっかけはストレート軌道に取り組んだこと

それまではパッティングは得意でしたし、自分のストロークを深く考えることもありませんでした。そもそも打ったボールは真っすぐ転がっていたので、今考えると形を気にする必要はなかったかもしれませんが、調子が悪いときに撮影したこともあり、真っすぐ引いて、真っすぐ出すパッティングストロークに取り組みました。

思い返すと、このときにストロークを修正しなければならないと深刻に考えすぎてしまったことが、イップス発症のきっかけだったと思います。自分のストロークのクセを大きく受け止めてしまって、とにかく真っすぐヘッドを出す練習を繰り返しました。今までと違う打ち方に取り組んだ結果、インパクトで左ヒジを引いてしまう反応が出て、イップスの症状が表れるように。その結果、ヘッドを前(目標方向)に出すことができず、パッティングが〝打てない〞状況になったのです。ほとんどショートしてしまい「お先に」のパットすら届かないこともありました。

真面目な練習が精神的なプレッシャーに

パッティングが入らなくても、そんな日もあると気にしないタイプだったらよかったのです。私の場合は性格的にも悩んでしまって、それを直さないとダメなんだと思いすぎてしまったかもしれません。自分のクセのあるストロークに対して意識が過剰になってしまったことで、必死に真っすぐストロークできるように取り組んだのですが、かえってイップスにハマってしまいました。

その結果、自分のストロークをギャラリーに見られたくない、練習ラウンドをしていても他のプロたちに見られたくないという意識が生まれてきました。イップスの症状が出るようになってからはなおさらです。真面目に取り組んだことが、さらに精神的なプレッシャーになって、イップスを深刻なものにしたと思います。

今でも、試合よりもむしろ芸能人などとプレーするプロアマのほうが、イップスが出やすい。もともと華やかなところは苦手なタイプなのに加えて「プロだから」ということで非常に期待されるわけです。プロアマだとチーム戦を行なったりしますから。でも、そのときのパッティングは本当に入らないですね。

私個人の経験からいうと、ミスに対して思い悩むタイプの人、真面目に考える人は、そのプレッシャーがイップスにつながることは少なくないと思います。とくに、キャリアが長いベテランゴルファーであれば、そのリスクは蓄積されていて、何かの拍子に表れてしまっても不思議ではないでしょう。

ある程度キャリアを積んだゴルファーであればイップスが起きる危険性はつねにある

佐藤の症状はメンタル面の影響が大きい。試合以上に、プロアマや芸能人とのテレビ収録でイップスが起きやすいという

Lesson

[症状]フォローでヘッドが出せなくなった

パッティングで “打てない” ことが佐藤の症状。インパクトで左ヒジが引けるように反応してしまい、ヘッドを出すことができなくなった。その結果、距離感が合わず、ショートするミスが頻発した

[対策]ハンドレイトに構え、ヘッドを最初から前方に出す

ハンドレイトに構えることで、最初からヘッドが前方に出ている状態にする。そのままストロークすることで、インパクト以降もヘッドが出る。ロフトが増えやすいので、ロフト角の小さいパターに替えたそうだ

解説 = 佐藤信人

●さとう・のぶひと / 1970年生まれ、千葉県出身。パッティングの名手として90年代後半から活躍。ツアー通算9勝をあげた。2004年ころからイップスに悩まされ、現在も完治せず苦闘中だという。近年は解説者としても活躍。JGTOの理事も務める。ミズノ所属。

構成=コヤマカズヒロ
写真=田中宏幸

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