ゴルフの動きは“逆算”で考えた方がいい!ゴルフ好きの研究者が教える新理論

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!

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逆運動学 逆算して解を導く

これまでの運動モデルではイラストAのように運動連鎖は体幹から末端に向かって行われる。これに対してIKでは、イラストBのように末端の作用点を担保することによってそこに至る解を逆算的に、体の調整力によって一発で求めるようとするものである。そして、ゴルフでは、上半身リード、インナーカウンター、IKがキーワードとなる。

これまで、ゴルフでもテニスのように安定して打ち返すためには、インパクトでのフェースの状態を決め、待ち伏せのスイングにして迷わず打ち抜けば自信をもって打てるという話をしました。また、ボールに意識をロックオンしたままコントロールするためには上半身リードが合理的であること、さらにその上半身リードでパワーを得るためには、捻転の解放よりもインナーカウンターを利用することが高効率で再現性が高いという話をしてきました。

ただ、これは説明したい話の序段にしかすぎません。今月はこれまでの話を総括し、「インバースキネマティクス」というまったく新しい概念を導入して次のステップに進みたいと思います。

インバースキネマティクス(Inverse Kinematics’以降「IK」と表記)という用語は、多くの人はおそらく初耳だと思います。Inverse(逆転した)、Kinematics(運動学)ですから「逆運動学・逆運動連鎖」とでもいいましょうか。私が初めてIKと出会ったのは、CG(コンピュータ・グラフィックス)の業界でのことでした。

当時IKはアニメーションの革命的な技術として、衝撃的なデビューを飾っていました。論文で事例としてあげられていたのが自転車を漕ぐアニメーションです。IK登場以前の古典的なアニメーション手法では、骨盤、股関節、大腿部、膝関節、下腿部(スネ)、足首、足裏の順番で体幹(上流)から末端(下流)に向かって、手付けで動きを積み上げていました。

具体的には、ペダルを踏み込むためには、まず股関節を下方に回転させて大腿部の先にある膝関節の位置が変わるので、膝関節で下腿部の角度の調整をし、次に足首を調整。最後に足裏が実際にペダルを踏むように作り上げる必要があったのです。

しかし、この手法というのは上の階層での選択肢に対して、下の階層の選択肢が階層ぶん掛け合わされることになるため解はほぼ無限にあり、そのなかから最適の一手を選ばなければなりません。

ところが、IKでは、関節に可動域などの物理特性・物理的制限を与えたうえ、ペダルとクランクを回転させるだけでペダルに接続された足が足裏から股関節に向かって逆方向に動作を伝え、まるで「あみだくじ」を当たり側からさかのぼうるようにして自然なアニメーションの解が一義的に求められるのです。

ちなみに、現在では、このIK設定に、モーションキャプチャーデータを適用することで、ほぼ完全なアニメーションの再現が可能になっています。

テニス、ゴルフへのIKの適用

では、ゴルフスイングをIKの視点で説明します。IKの観点から見ればボールはペダルに、フェースは足裏に相当し、ライダーと自転車のようにそれぞれ別のオブジェクトに属しています。逆運動学の考え方では、ボールがしっかり打てていて、思ったとおりの弾道が得られているということは、インパクト以前のスイングは合理的に行われていることになりますので、細かなことは考える必要はありません。

逆に結果がよくなかった場合は従来の積み上げ式の考え方では、どこかにミスがあったので犯人捜しをしてそれを修正しようとしますが、IKスイングでは、スイング中のどこか特定の動作が悪かったのではなく、イメージするフェースの状態がインパクトで達成できなかっただけ、と考える。

あえてミスの部分修正などは行わず、再度フェースの状態がイメージどおりになるように考え、感じて打つことができます。そこで、重要な役割を果たすのが前号で説明したインナーカウンターです。インナーカウンターでは、左ワキの引き寄せによってトリガーが引かれるような形で最終加速が自動的に行われるため、迷いが入り込みにくくインパクトが緩みません。

また、インナーカウンターで右手を受け止める左手の高さを微調整することで、地面とリーディングエッジの距離を容易に設定できるため、手首を軸とする二重振り子で確実にボールを叩きにくいことができるのです。とはいえ、長いシャフト、小さなフェースで小さなボールを打つゴルフでは、どうしても視覚情報に頼りたくなってしまうため、インパクトでフェースがスクエアになったらいいな、という積み上げ型のスイングになってしまう傾向があります。

そこで、フェースの状況を知る手段となっている視覚確認を、インパクトの際の衝撃・音という五感感覚に置き換えるシステムをここで導入します。さらに、インナーカウンターの左手による右手ブロックによる衝撃とセットにし「ワン、ツー」でインパクトを感じます。

こうすることによって、スイングの目的を視覚による観念情報から痛点による実感覚に置き換えることができ、インパクトをリアルに感じられるようになるのです。これによってインパクトに集中でき、インパクト以前が気にならなくなるため、ボールを打つことを特別なことだと思わなくなります。

これで、逆運動学による新しいスイング理論の本論に入る下準備が整ったことになります。次号からは、インパクトの物理を学びながらさらにIKスイングを詳しく解説していきます。

いかがでしたか? サンドラー博士の解説を参考にしてみてください!

文・イラスト=サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということい気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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