パターの距離感覚を“小脳で記憶”する!研究者が解説

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

※「MOS」とは「memory of the senses」の略で、距離感やフェースの状態などを具体的な感覚量として“小脳で記憶”すること。高い再現性を得ようという新しい理論

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インパクト圧でパターの距離感覚を制する

短いアプローチが楽しくなる

前号では、ヘッドスピード、そして意図した飛距離を再現するためには、インパクト圧という実感覚によってコントロールすべきである、ということを実際に体験していただきました。痛覚でインパクト圧をコントロールするというのは、心にもっとも近いところで行なわれるものであり、数値としての振り幅で概念的に飛距離をコントロールしようとすることとは一線を画するものだったと思います。

ピンポン球を狙ったところに平常心で打てるようになったら、今度は外に出て実際に芝の上でゴルフボールを打ってみましょう。1ヤード、3ヤード、5ヤードとターゲット設定してインパクト圧と飛距離の対応表を頭の中で作ります。

以前も話したようにアプローチショットの基本イメージは、テニスでのローボレーのコンタクトなのでフェースで厚く当てにいきながら、わずかに下方スライドさせるようにコンタクトしてインテンショナルなバックスピンをかけてやります。ズルッとフェース面で擦るような感じがして適度なバックスピンがかかった、コントロールされたボールが打てればOKです。

自分の決断に迷わず絶対の自信をもって打つ

青木功プロのパット時の打音の話も前号でしましたが、パットにおいてもインパクト圧は重要な要素になります。今号では、インパクト圧の話をパターにまで広げて理解を深めていきたいと思います。まず、グリップですが、逆オーバーラッピング、クロスハンド、クロウなどのパットならではのグリップがいろいろあります。結論からいえばどのグリップでも構わないので、フェースを感じられてしっくりくるグリップを選んでください。

ただ、右手の平でインパクト圧を感じることのできるグリップのほうが繊細な感覚を得られることができると思いますので、手の平でボールを送り出せる感覚がある握り方がオススメです。次に、アドレスでの腕の形ですが、パットではボールを上から覗き込み、パターを眼下で振り子のようにストロークしてインパクトをするため、両ヒジは自然に若干曲がった状態になっていると思います。

一般的なパターグリップは正面の平らな部分に親指を乗せて、左右から手を添え、両腕の中にできた五角形の形をキープしながら左右均等にホールドするとされていますが、この中央ホールドというのはイデオロギー的には美しいかも知れませんが感覚的には不安定になってしまうのです。インナーカウンターの左手ブロックのイメージにも合わないので両ヒジは少し曲げながらも(逆正五角形にはこだわらず)アイアン同様、左手に右手を添えるようにグリップします。

3メートルほど離れたところに目印を作り、おおよそ時計の文字盤でいえば7から8時のあたりまで手打ちにならないように体幹で振り上げてトップを作ったら、インパクトの瞬間でのフェースの方向、初見の距離なのでとりあえず勘でインパクト圧をイメージしてください。切り返し後は上半身リードで、腕の自重でフォワードスイングに入ります。

これまで説明したアイアンでのインナーカウンターでは、ヘッドスピードを稼ぐために左ワキをキュッと締めて左腕で右腕をブロックするようなイメージで行ないましたが、パター(及び短いアプローチ)では、加速のためというよりは、緩やかな加速とタイミングをとるためなのでかなりマイルドなものになります。パットではラケットを握っているときのように、右手の平の感覚を大切にします。7時の位置くらいの低いトップから、自重でわずかに加速しながらインパクトゾーンに入ってきた右腕とシャフトとパターヘッドを左手首を固定し左ワキをほんのわずか締め、体側に寄せて受け止めるようにしてインナーカウンターをかけ、スイートスポットでしっかり確実に打ち出します。 

このときにカンッと打ち出すのではなくボールの重さとやわらかさを感じながらコンタクトをします。さらに2022年11月号で説明した衝撃を吸収させる「タッチ」的要素を加えることでボールを掌握でき、意識が乗ってコントロールがしやすくなると思います。まずは、最初のパットなので長かったり短かったり結果は思いどおりではないかも知れませんが、そのときの距離とインパクト圧をセットで記憶してください。

2回目は、直前の記憶をもとにインパクト圧を決定して、その実現だけを目指してボールに集中して打ってみると意外に寄っていることに気づくと思います。次に、先ほどの3分の2の距離をストローク幅は変えず、インパクト圧だけを調整して打ってみてください。これで寄ったら、次は3分の1の距離も試してみます。わずかな距離の違いであっても自分の手の平に残る実感覚の記憶を根拠とすると、心が確信した状態で明確に打ち分けられることがわかると思います。

外側からの観察と算数で振り幅を調整するこれまでのパットではこの自信は得られないので、ここは大きな違いとなります。インパクト圧による実感覚の距離コントロールに関して2回にわたって説明してきましたがいかがだったでしょうか。「理論でわかったつもりにならず、距離は実感覚で記憶せよ」。これがここでの結論です。

パットの場合はほかのショットに比べ、絶対的な距離が短く単純に振り幅に対する距離換算の感度が高くなるため、振り幅で正確な距離の再現をするのはかなり難しい(イラストA)。これに対しインパクト圧による距離の記憶・再現は、痛覚に紐ずいた距離の記憶・再生なので、認知解像度が高く、かなり微妙な違いも識別できる(イラストB)

いかがでしたか? ぜひ、参考にしてみてください!

文・イラスト=サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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