シャフトをしならせて飛距離を伸ばす方法!「トップで手首の角度を…」と解説

クラブを加速させるコックを使うのが苦手なゴルファーは多いが、シャフトのしなりを使えば飛距離アップできる。

その方法を今野一哉コーチにレッスンしてもらいました。

解説=今野一哉

●こんの・かずや/1982年生まれ、千葉県出身。プレーヤーとしてもコーチとしてもゴルフの造詣の深さは業界トップクラス。小誌でもその知識を広める連載を掲載中。キッズゴルフクラブ代表。

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「アイアンだとコックが減る」をカバーするのが“しなり”

スイング中のコックはなんのためにするのか? それは飛ばすためです。

クラブは手首を曲げて、インパクトに向かってリリースすることで加速し、ヘッドスピードが上がるのですが、ドライバーより小さなヘッドで地面の上のボールを正確にミートしたいアイアンの場合、軌道やフェース向きがブレるのを嫌がってコックを抑えてしまう人が多い。すると、飛ばなくなりますが、それをカバーするのがシャフトのしなりで、コック&リリースと同様の役割りを果たしてくれます。

シャフトは、振り上げたクラブを戻す動作が行なわれる際に、シャフトにもっとも負荷がかかる切り返しでしならせます。それには力を入れる必要があるのですが、「切り返しは脱力するものでは?」と思っていたらカン違い。ある部分をキープするために力を入れてシャフトをしならせて打てば、コックを使わなくても飛ぶようになります。

切り返しで力を入れてOK!トップでの手首の角度をキープしたままインパクトへ

左手首を手のひら側に折る(画像左)、ニュートラル(画像中央)、左手首を
甲側に折る(画像右)

ヘッドを胸の高さまで上げて、ヘッドと手元の位置を変えずに手首だけ折ってみると、手首の角度によってフェース向きが変わるのがよくわかる。左手首を「甲側に折る」と開き、「手のひら側に折る」と閉じた向きになるが、トップではどちらのフェース向きでもOK。

手首の角度を変えたり、アドレスの ニュートラル状態に戻そうとしてインパクトへ向かうと、軌道もフェース向きもタテヨコに大きくズレやすくなってしまう

大切なのは切り返しでシャフトをしならせること。トップからインパクトまで手首の角度を変えずにキープするリキみが、切り返しでのシャフトのしなりを生み出す。これが飛ばすための正しい力の入れ方になる

トップで「左手首が甲側」に折れている→フェースが開いているので「右サイドでさばく」「やや右足体重」で打つと真っすぐ飛ぶ

トップでの左手首の角度をチェック。甲側に折れている人はフェースが開いた状態になっているが、手首の形を崩さずそのまま切り返す。この手首の角度をキープする力の入れ方で、シャフトに負荷をかけてしならせよう

手首の角度を変えないとフェースが開いている状態になっているが、そのままでOK。フェースが開いているぶんはスイングで調整。ボールを右サイドでさばく(左)や少し体重を右足に残して打つ(右)と、ボールのつかまりがよくなり真っすぐ飛ばせる

トップで「左手首が手のひら側」に折れている→フェースが閉じているので「腰を切る」「ハンドファースト」で打つと真っすぐ飛ぶ

左手首をチェックし、手のひら側に折れているか、甲から腕が一直線になっている人は、フェース向きがクローズになっているが、このタイプも手首の角度をキープする力を入れて振り下ろし、切り返しでシャフトをしならせる

フェースが閉じた状態でインパクトに向かっても、体の回転力を上げればヒッカケやチーピンが防げるので、腰を積極的に切っていく(右)。ハンドファーストも左へ飛んでしまうミスを防ぐ効果があるので、手元をしっかり目標方向に出して打とう(左)

飛ぶインパクトも身につけよう!正しい「入射角ゆるやか」は「出口もゆるやかに!」をマスターする4ドリル

「シャフトをしならせて打つ」の次に大事なことは? と今野に聞くと「インパクトですね。飛ばしたいなら入射角はゆるやかにしたほうがいい」とのこと。

入射角が鋭角になるとヘッドが地面に触れる。触れると必ず減速してしまう(×)。ゆるやかな入射角(〇)で打ったほうが飛ばせる。飛ぶ「ゆるやかな入射角」は、ヘッドの入口だけでなく“出口”もゆるやかにするのがポイント。


鋭角に打ち込んでみた

飛距離 156.4ヤード


鈍角で払い打ってみた

飛距離 169.0ヤード
(12.6ヤードアップ!)


4つのドリルで、そのヘッド軌道を完璧にマスターしよう!

【Drill1】背面打ち

背中側を飛球線方向に向ける背面打ちは、インパクト後にヘッドを高く上げられないので、ヘッドを低く出す振り方が体感できる。無理にヘッドを高く上げようとすると、球に当たらないか、当たってもフェースが大きく開き、球が右に飛んでしまう(×)

【Drill2】スプリットハンド

【Drill3】指先で持って打つ

【Drill4】クローズスタンスで左手1本打ち

「ヘッドの入射角もインパクト後のヘッド軌道もゆるやかにするには、フェースを返すことが必要不可欠です」と今野。これら3つは、インパクトゾーンで自然にヘッドをターンさせる動きが身につくドリル。うまくミートすると打球は、真っすぐかやや左に飛ぶ。小さなスイングからはじめて、フェースがきちんと返るようになったら徐々に振り幅を大きくして、フルスイングに近づけていこう

レベルが上がったツアー。プロが求めてきたのが“落下角”!

今野 三好くんと共演できる日がくるなんて、感無量だわ。

三好 僕もです! 学生時代の今野さんのスイング指導のおかげで、トラヴィルの開発時は自分でも試打をして性能を確かめることができました!

今野 アイアン巧者の三好くんが開発に大きく携わったシャフトということで、すごく注目していましたが、期待以上の出来。「ツアーから生まれたアイアンシャフト」というキャッチフレーズですが、幅広いレベルやタイプのゴルファーに合うシャフトですよね。

三好 そのとおりですが、ツアーから生まれたのは真実です。近ごろの男女ツアーの予選カットや優勝のスコアを見ると、数年前からだいぶレベルが上がっています。プロたちは何かしらでライバルに差をつけなくてはいけない。それはスイングだけでなく、シャフト性能でもです。

今野 そのひとつがランディングアングル「落下角」なのね。

三好 はい。アイアンショットの弾道がよりグリーンの上から狙えるので、長めのアイアンや硬いグリーンでも球を止めることができます。

“Tour Ability Structure”を採用し、手元の剛性を抑えつつ先端を高剛性化。シャフトが粘ることでヘッドの操作性を高め、入射角がゆるやかになるようにしています(三好)
前出のレッスン(P44)でも説明しましたが、入射角がゆるやかになると飛距離が伸びます。その入射角をシャフトが自然に作ってくれるのは、ありがたい機能ですね(今野)

今野 落下角を大きくするカラクリは?

三好 インパクト時のロフトが表示・設計どおりになるようにしています。ロフトが立ちすぎたり、しなり戻りによって寝すぎることもない。

今野 とはいえ、ガチガチに硬くはない。色は精悍なイメージのマットブラックだけど、ヘッドは意図どおりに素直に動いてくれる。ということは、先端剛性が高い?

三好 さすが師匠! トラヴィルは中元調子ですが「金属、カーボン、ゴム」の3種類の素材が使われていて、カーボンは積層構造に秘密があり、手元に向かってゆるやかにしなる。一部だけがしなると、入射角やタテ距離にバラつきが出やすくなってしまいますからね。

今野 金属とゴムの役割は?

三好 金属はスチールシャフトと同様のクラブバランスを出します。ゴムは弊社のフルショットをするシャフトでは初搭載ですが、振動吸収によっての打感のよさと、しなり戻りを抑えて意図しない動きを防ぐ効果があります。

今野 振り心地や打感など、フィーリング面でもスチールに劣らないか、それ以上のよさがある理由はそこにあるのか。

とくに40歳すぎたらトラヴィル!

スイング力は上がったが、パワーやヘッドスピードが落ちてくるのが40歳代。トラヴィルには、技術を活かしつつ落ちたパフォーマンスを補って、ハイレベルな球でスコアメイクできる性能が詰まっています(今野)

三好 今野さんが打ってみての正直な感想はどうですか?

今野 渋野日向子プロや古江彩佳プロなど多くの女子プロだけでなく、飛ばし屋の男子プロまで使っているというのに納得ですね。飛び姿は放物線よりも台形っぽいイメージで、落下角がたしかに大きくなって、止められるという武器を手にした感じ。85、95の軽量タイプはカーボンならではの恩恵がありつつ、さらに「40歳すぎたらトラヴィル!」と声を大にしていってもいいかも。

三好 その理由は?

今野 僕も40代になったけど、体はまだまだ動ける一方、パワーダウンは否めない。そんななかスコアを向上させるのは技術で、多くのゴルファーは40代になると円熟味を増してくる。スチールシャフトは比較的ハイスピンボールになるが、トラヴィルはロースピンとハイスピンの両方が打てて、ヘッドスピードも上がりやすい。40歳をすぎると将来的にカーボンのメリットを活かしたい日は必ずくるので、それに慣れていくのにもトラヴィルは最高のシャフトだと思います。

三好 なるほど。もちろん、スペック次第では若いゴルファーにも合います。

今野 プロだから、まだ若いから「スチール」は時代錯誤。打てば納得のナイスな球が飛び出すことは間違いありません!

フジクラ TRAVIL SPEC●モデル(フレックス)/85(R、S)、95(R、S)、105(S、X)、115(S、X)●長さ/35. 5〜39インチ●重さ・トルク/99g・2.3度(95・フレックスS)●中元調子●価格/1万4300円

トラヴィルのほうが打ち出し角+2.6度、落下角+3.1度「ビタッ!」と止まる弾道になった!

似たヘッドタイプ・同ロフトの7番アイアンで試打比較

今野と浜田さんが使用中のアイアンとトラヴィルを装着したアイアンを打ち比べ。番手は7I、ヘッドの性能や設計で差が出ないように「似たヘッドタイプ、同ロフトと長さ」で比較してみると、大きな差が出た!

トラヴィルをオススメしたい浜田さんは、すべてのデータが上がり、落下角は3.1度も大きくなった。「落下角のプロの理想値は45度以上。通常営業のゴルフ場のグリーンなら40度以上でボールは十分止まります。浜田さんはトーナメントの硬いグリーンでも止まる球になりましたね」(三好)

今野も同じく落下角が3.1度アップ。弾道の最高到達点も3.7ヤード高くなったが、驚くべきはキャリーの伸び。「キャリーが10ヤードも伸びましたが、ランを計算するとスチールシャフトが7. 9ヤードに対して、トラヴィルは4.9ヤード。ランが3ヤードも抑えられたのは驚愕に値します」(今野)

スコアアップに効果大!乗る確率が高まるマネジメントができる

「止まる球が打てると、マネジメントの幅も広がります」と今野。グリーンに乗る確率が飛躍的に上がるのが、同じ距離であってもピン位置によって番手を替えて打つ狙い方。

たとえば、ピンが手前のときはグリーンの奥側を広く使えるので、1番手上げて奥を狙う。止まる球が打てればグリーンからこぼれずナイスオンに。スコアを崩してしまう危険度が下がるのだ。この確実にパーが獲れてバーディチャンスも作り出せる〝賢く積極的な狙い方〟の成功率を『トラヴィル』なら高めてくれる!

手前ピン・奥が広い

ピン奥でも乗ればO K!大叩きの可能性はなくなります!

止まる球が打てるから「ピンをデッドに狙って奥まで打たない」というマネジメントをとりたくなるピン位置ですが、薄い当たりでカラーの手前にキャリーするとグリーンに乗らないショートのミスが出やすい状況でもある。ここは『トラヴィル』の止まる性能を活かし、1番手上げて奥の広いエリアに乗せて2パットで攻略すれば、無駄な打数が増えるピンチを回避できます(今野)

奥ピン・手前が広い

あそこ( 奥)から寄せるのは難しかったですね

ピンまで7Iでちょうど届く距離でしたが、今野さんに「ピン手前でもグリーン上ならOK。1番手下げて打ってください」といわれ、8Iで打ったらピン手前の広いエリアに乗りました。グリーンまで行ってみて気づきましたが、グリーン奥は“寄らず入らず”になりそうな危険なライ。番手を下げつつ「トラヴィルならではのきちんと止まる球が打ててよかった」と思いました(浜田)

いかがでしたか? ぜひ、参考にしてスコアアップへ繋げてください!

テスター=浜田一樹さん

●42歳。平均スコア95。ドライバーのHSは40m/秒。現在は、フルキャビティのヘッドに軽量スチールシャフトのアイアンを使用しているが、ランが多めの弾道に不満がある。

藤倉コンポジット技術開発部
三好啓介

写真=高橋淳司
協力=日神グループ 平川CC

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