「地獄のような1年」青木瀬令奈、4年ぶり優勝までの“苦悩”と“出会い”を語る!

ツアーで活躍しているプロたちは誰もが自分のゴルフを「よりよいもの」にしていくために様々なことを考え、走り続けている。この連載では、プロたちの苦悩や喜びなど、普段見えない部分を探っていきます。

今回は青木瀬玲奈プロにインタビュー。メンタルトレーニング方法や、今後の展望について語ってもらいました。

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レーサーとの出会いで考えが変わった

気持ちを切らさず、自分の逃げ場をなくしてのプレーが過去最高の賞金ランキングにつながった

――20-21年シーズンを振り返ってどうですか?

青木:2020年はいつ試合が開催されるのかわからず、モチベーションの維持が大変でした。試合ができても、自分の調子を合わせることができず、苦しい年でしたね。2021年はステイホームが続き、ゴルフに対しての時間よりも引退したあとのことを考えてしまったり、このままシードが取れなかったら引退かなと、マイナス思考に陥っていたときもあって、それが試合にも悪い影響を与えたかもしれません。

――どうやって抜け出したんですか?

青木:一番近くで支えてくれていた大西(翔太)コーチが「君ならできるよ、ファン1号として信じてるから」とずっと声をかけてくれていました。5月にはいろいろなスポーツ選手が集うリシャール・ミルファミリーのメンバーで、レーシングドライバーの松下信治選手とコーチの3人でごはんに行きました。同業者であるゴルファーの先輩には打ち明けられなかった悩みを、異業種の松下選手だからこそ話すことができました。松下選手に「悩みの深さはわからないけど、今いる世界が自分のいたい世界でしょ? そこから自分の足で降りることはしなくていいんじゃない?」「過去と未来のことは考えないで目の前のことを集中してやったらいいんじゃない?」と言われて、確かにそうだと思いました。ほかにもレーサーのメンタルトレーニングの話を聞いて、ゴルフもメンタルのスポーツだから通じるなと思って、その方法を実践したりしました。

――メンタルトレーニングはどのようなことをしたんですか?

青木:まずは今の自分の心の状態を理解して、認めることから始めました。そこから気分をコントロールして、心の状態をベストな位置にもっていく。優勝したサントリーレディスも試合中、気持ちが上がりすぎないように「低く低く」と暗示をかけていました。

――松下選手との出会いが4年ぶりの優勝につながった?

青木:その出会いもそうですし、大西コーチの支えもあって優勝することができました。その副賞で、8月には全英オープンにも出場できましたが、すごくいい経験でしたね。とても楽しかったんですが、悔しさも大きい。自分のなかで海外への挑戦は若い選手がすることというイメージがありましたが、また出場したいと思う気持ちが強くなりました。

――いろいろな変化があったシーズンだったんですね。

青木:テレビや雑誌で取材を受けると「すごくいいシーズンだったね」と声をかけてもらうことが多かったのですが、自分のなかでは今までで一番きつい地獄のような1年だったなと(笑)。優勝したあとも、3勝目のために毎週どうやったら優勝できるかを考えていました。気持ちを切らさずに、自分の逃げ場をなくしてやっていった結果が、後半戦の予選落ちを2試合だけにとどめた要因なのかなと思います。苦しかったですけど、賞金ランキングが過去最高位で終われたのでよかったです。

リコーカップにファンを連れていきたい

ゴルフは覚悟の繰り返し。覚悟を決めて打つとミスの原因がはっきりする

――2勝目と4年前の初優勝との違いはありましたか?

青木:1勝目のときは、悪天候で3日間の短縮競技になり、優勝争いもなかったので、優勝がこぼれ落ちてきた感じでしたね(笑)。だから「2勝目はどうすればできるんだろう?」と思っていました。会場にいた人には「あんなに悪天候の過酷な試合はない。自信をもっていい!」と言ってもらえたりもしましたが、「今度は最終日までプレーして優勝してね」という声も多かったですね。やっぱり世間的には、短縮競技での1勝ではダメなんですよね。自分のなかでも勝ち方のパターンがわからず、困っていました。

――昨年の優勝時はどうでしたか?

青木:飛ぶ鳥を落とす勢いの稲見萌寧ちゃんとの争いだったので、誰もが萌寧ちゃんが優勝すると思っていたでしょうね。もちろん、私も練習のときから優勝を目指してやっていました。この試合の練習が一番熱をもってやっていたかも。練習日から500から600球くらい打っていましたが、それが苦じゃなくて自分の納得がいくまで練習しました。でも、正直、今となっては初日から3日目までのことを全然覚えていないんです。それだけ無心で目の前の1打のことしか考えていなかった。ボギーでもバーディでも動じず、最終日も自分のできることをしようと思っていました。相手がどういうショットを打ってきても動じないメンタルをもちながらラウンドしたら、結果が自然についてきた感じです。4日間競技の最終日・最終組で優勝争いを経験して勝ったというのは、1勝目と比べものにならないほどの自信になりました。個人的には、宮里藍さんの名前がついた試合で優勝できたのもとてもうれしかったです。

――先ほど、1勝目のときは勝ち方がまだわからなかったと言っていましたが、今、過去の自分に2勝目の仕方を教えるならどう教えますか?

青木:覚悟をもってやれっていいます。逃げるなと。苦しいことや地味なことこそ目を背けたくなるけど、第一線で活躍する時間は人生のなかでも一瞬。今ガンバらなかったらガンバるところがないぞ、と。覚悟ってゴルフで一番大切なことだと思うんですよ。

――具体的にいうと、その覚悟とは?

青木:2018年に大西コーチに「最近覚悟が足りないんだよね」と言われて、調べたことがあります(笑)根性論なのか? って思っていましたが、覚悟とは、決めたことに対して行動するまでがワンセット。途中でその信念を曲げたり、邪念が入ってしまうのは、覚悟が決まっていないということ。なので、ワンショット、ワンショットで打つ場所を決めて行動する。それが「覚悟が決まっている」ということになるんです。ゴルフは覚悟の繰り返しのスポーツ。覚悟を決めて打ったショットでのミスは、ミスの原因がはっきりするんです。そうなると、そのあとの練習にも身が入る。何が悪いのかわからず何となく練習するのが一番ダメ。もっと早く覚悟を決めてプレーしていたら、2勝目ももっと早くできていたかもしれません。

――昨年は気持ちの面で大きく成長できたんですね。

青木:今までは技術や内容にフォーカスしていましたが、昨年は逃げない気持ちや、覚悟の決め方がわかりました。試合中も、パフォーマンスとして喜ぶのはいいんですけど、心で燃やす炎の色は赤ではなく、青い炎のイメージ。つねに落ち着いた気持ちでいるようにしていました。過去には、運を味方につけるためにゴミ拾いをしていた時期もありました。「ドライバーからパターまで内容がいいのに、なんで予選を通らないの! もうゴミ拾いしかない!」と(笑)

――そんなこともあったんですね。今年はどういう年にしたいですか?

青木:毎年決めている目標があって、優勝してリコーカップにファンのみなさんを連れていきたいです。リコーカップは独特な雰囲気があり、選ばれた人しかいけない大会。そこにファンの方たちを連れていくことが、恩返しになると思っています。

青木瀬令奈

●あおき・せれな/1993年生まれ、群馬県出身。153cm。21年は宮里藍サントリーレディスでツアー2勝目を挙げる。その後、アース・モンダミンカップで6位タイ、TOTOジャパンクラシックで4位タイに入るなどで、賞金ランキングは自己最高の21位に入った。フリー。

写真=相田克己、田中宏幸

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