フェースローテーションはいらない!? ゴルフ好きの研究者が解き明かした真髄とは?

ゴルフはスポーツのなかでも︑とくに意図した動きができないといわれる。

その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに光明を射す!

【あわせて読みたい】新作「JAWS RAWウェッジ」はスピンがどれくらいかかる?辻村コーチが“ガチ試打”

相殺してストレートボールになるのは本当か?

スイングプレーンを真上から見てしまうと高さ方向の情報が失われてしまうため、クラブが水平に振り回されているものと錯覚してしまいがち。これは必要以上にボールをスクエアにとらえることのシビアさを強調してしまい、スイングは“スライス要素をもつ”とまで言われてきた。それを相殺させストレートボールを打つためにはフック傾向のあるフェースローテーションが必須とする考え方も根強いが、フェースローテーションは意図的に行なわず、自然に任せるものとしておきたい

先月は、縦横合成スイングを例に取り、鉛直軸からのスイング視点を捨て、ローカル軸で考える必要性を説明しました。まだ、納得されていない方のために、今月はもうひとつの例を挙げて鉛直軸でゴルフを考えることの危うさを共有していきたいと思います。

ストレートボールを打つには「フェースローテーションを行ない、スイング自体がもつスライス傾向を打ち消してやればいい」と言われます。レッスン書に書いてあったり、上級者やコーチから指導されれば納得してしまいがちですが、鵜呑みにせずにちょっと疑ってみましょう。

そもそも、なぜスイングはスライス傾向があるとされているのかの“前提”の問題ですが、テニスではボールをスクエアにとらえて打った場合、ゴルフと同じ左回転のスイングであってもスライス回転はかかりません。スライス回転が生じるのはフェースが開いてボールを擦るようにとらえた場合、もしくはスクエアであってもフェースを左右にスライドさせて意図的に横回転をかけたときのみです。

では、ゴルフスイングは、なぜ基本スライス傾向があると言われるのかというと、恐らく錯覚によってそう見えてしまうのです。CAD風の上面図では、高さ方向の情報が失われてしまうことは前回触れましたが、たとえば前傾したスイングプレーンを土星の環に見立ててこれを真上(イラスト:視点A)から見てみることを想像してみましょう。

これは、真上から光を当てて地面に土星を投影しているようなものですから、土星の環は水平になっているように見え、環のみならず前傾していた土星の自転軸も垂直に立っているように感じられます。これは錯覚なのですが、この真上からの視点はゴルフでも同じことが起きてしまい、スイングプレーンは地面と水平になり、クラブも鉛直軸に沿って水平に振り回るものと知覚してしまいます。

そして、このイメージでは、クラブが体の正面にきたときの1点のみがフェースがスクエアになるポイントで、それ以前では右向きで開いている、それ以降では左にかぶってしまっていることになるので、この正面のスクエアになる1点以外はストレートボールにはならないシビアなコンタクトイメージになってしまいます。

「シャフトは長く、スイング中にしなれば、体幹の回転に対して振り遅れる傾向にある」と考えれば、フェースは開いた状態でインパクトを迎える可能性が高く、即ち“スイングはスライス傾向がある”ということになるのです。

しかし、実際にはスイングプレーンは前傾しているので、振り遅れによるフェースの開きの一部はロフトが増える方向に働いて、それほどシビアではないのです。水平回転での振り遅れによってフェースが開いてしまうスライス傾向を抑えために考え出された苦肉の策が、フック傾向があるといわれるフェースローテーションを加えて相殺させ、ストレートボールにすればいいというものです。

しかし、相殺(中和)するというのは酸とアルカリの反応のように、同じ原理のなかでプラスとマイナスになるものを同数足し合わせることで実現するものであって、振り遅れによるフェースの開きを帳消しにするために、原理が異なるシャフト軸の回転によるフェースの起き上がりを利用するという説明は、そもそもおかしいと考えなければなりません。

さらにいえば、振り遅れはミスによって起こりますが、ミスである以上、スイング毎にスライスの度合いも違うはずですし、ましてやナイスショットが打てたときは、振り遅れが生じない(スライスが起こらない)場合だってあるはずです。これに対応して毎回適切なフェースローテーションをあてがうことは、シンプルではないし、現実的でもありません。

つまり、スライス傾向のあるスイングにフェースローテーションを足し合わせて相殺し、ストレートボールにすると理論はまったく辻褄が合っていなくて破綻していていることになるのです。

試打ロボットが示すもの

ここまで、2回に渡っていかにゴルフが鉛直座標系という世界観に引きずられているかを説明してきました。そこにあるのは、慣れ親しんだ鉛直軸でスイングをしたいと熱望する余り、かえってスイングを複雑にし、難しくしてしまっていたという悲しい現実です。

これまで当たり前だったものを捨てるのは心苦しいとは思いますが、ただ、これはもうどちらが好みかという次元の問題ではなく、どちらを選ぶかはすでに答えが出ている話なのです。「試打ロボット ゴルフ」のワードで検索してみてください。株式会社ミヤマエの『ROBO -10』という試打ロボットが見つかると思います。

このロボットは、前傾した軸にすえられた肩に相当する回転軸でクラブを振り回してボールをヒットしますが、剣道の面のような動きを行なうための上下動の関節や左右180度回転させられるような水平の回転軸、フェースローテーションを行なう回転軸も存在しません。

つまり、このロボットには縦横合成スイングやフェースローテーションによる相殺動作を行なう仕組みは存在しないのです。このことは“ゴルフはもっとシンプルであるべき”だと私たちに教えてくれているのです。

いかがでしたか? 疑問を解決して、ゴルフを楽しみましょう!

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてかは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

【あわせて読みたい】

アイアン25本をガチ試打!アマが選んだ「トップ3」は?

「チャーシューメン」ではなく…!?三ヶ島かな、いいリズムでドライバーを振る方法を伝授!

西村優菜の“名勝負”とは?「小さな勇者」の国内メジャー優勝

関連記事一覧